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セクハラの甲乙関係

Posted May. 18, 2013 08:19,   

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この1週間、全国が「尹昶重(ユン・チャンジュン)事態」で沸き立った。大統領の訪米に随行した大統領府報道官の醜態と突然の帰国は、この国の首脳部が見せた一編の低質なドラマだった。大統領を補佐にするだけも忙しい時に、在米韓国人インターン女子学生の尻を触り、未明には裸でインターン女子学生をホテルの部屋に呼ぶとは、まともな精神状態と見ることはできない。

国民は大きなショックを受けた。事態を拡大させたのも尹氏だった。尹氏が自ら要望した記者会見は、厚顔無恥とは何たるかを知らしめた。初めは「励まして、腰をポンと叩いただけだ。便宜上、部屋の鍵を渡したが、未明に訪ねて来たので叱って返した」という尹氏の言葉を信じたかった。仮にも一国の大統領に随行した報道官が、普通なら若い女子学生にセクハラをするはずがない。しかし、言葉の余韻が消える前に尹氏は奈落の底に落ちた。大統領府で自筆署名した供述の内容が伝えられ、図々しくもついた嘘はすべてばれた。

尹氏が言った嘘は、徹底的に計算されたものだ。「尻」を触ったという被害女子学生の主張に反して、尹氏は「腰」を強調した。米連邦法の性犯罪の基準を考えて意図的に準備したと見ざるを得ない。米国の法は性器や胸、尻を直接または服の上から触ることを性的な接触と規定しているため、処罰を避けるために「腰」を強調したのだ。尹氏は、自分がセクハラをする人間ではないことを名誉をかけて誓ったので、尻を触り、ホテルの部屋で真っ裸でいたということを認めた供述によって、いかなる非難も甘んじて受け入れなければならない状況に追い込まれた。しかし、謝罪しても許されないのに、法律のアドバイスまで受けて対策づくりをし、「文化的違い」で起きたハプニングであると被害女子学生をバカにした記者会見まで要望するとは、開いた口がふさがらない。さらに、被害女子学生を呼んでもいないのに未明にホテルの部屋にやって来たおかしな人間にしたことは、性犯罪事件の裁判過程でよく発生する2次被害状況を目にしているようで、卑劣極まる。

このようなセクハラ事件は、特に男性の優越的な支配関係から起こることが多い。最近、話題になった甲乙関係が性犯罪の領域で起こったのが職場内のセクハラだ。ニューヨークタイムズはこの事件を報道し、「職場で男性上司が女性の部下に対して酒を口実にいやがらせをすることを大したことと考えない韓国の風土にも一部理由がある」とし、私たちを恥じ入らせた。

そのような指摘に反論する余地はない。韓国女性民友会が「2012年女性労働相談」を分析した結果、全体の相談のうち職場内のセクハラが最も多く、このうち事業主や上司によるセクハラが大半だ。特に、契約職と派遣職の女性被害のケースが最も多かった。採用面接で男性面接官が女性求職者にセクハラをするケースが度々報道されている。

尹昶重事件も、「甲」である尹氏が酒を飲もうと言えば簡単に断ることができないインターン女子学生の立場関係によって起きたことだ。しかも、故国の大統領の訪米をサポートすると志願した愛国心と義務感、そして「大統領府報道官という人なら過ちは犯さない」という信頼が被害女性に遅い時間に酒を飲ませたのだろう。尹氏がホテルの部屋に来るように言った時、被害女子学生は最初は断ったが、暴言を吐き、優越的支配者である甲の横暴を最大化した瞬間、彼女はこれを回避できない状況に直面する。これを指摘したニューヨークタイムズの報道は、韓国の甲乙関係の正鵠を正確に射ている。

もちろん「甲」の立場も考慮しなければならない。

セクハラが成立するかどうかは、韓国最高裁の基準は恣意的な面がある。男女雇用平等法第2条と同法施行規則第2条は「職場内のセクハラ」を規定し、被害者の主観的な事情を最優先に考慮の対象にしており、最高裁も被害者本人の主観的な性的羞恥心および抵抗感があるかどうかを基準にしている。「加害者の意図」は考慮しないため、もし行為者が魅力的な「甲」の場合、被害者が抵抗を感じないという理由で犯罪成立の有無が変わる問題点がある。しかし、いかなる場合であれ、甲乙関係での甲の不当な横暴と優越的地位の乱用は根絶されなければならない。企業間取引と同様、性犯罪の領域でも、甲の不当な要求を乙が受け入れることはできない。しかし、甲の横暴を防止するという論理で、当事者の自由で自発的な意思決定の問題まで歪曲する道具に使われてはならない。甲乙関係の問題が社会的平等だけを強調する論理に悪用されるなら、警戒の対象になる。