ギリシャ神話にはキプロス島が数回登場する。天空神のウーラノスは大地神のガイアが産んだ怪物兄弟を地下の地獄に閉じ込める。復讐心に燃えたガイアは息子のクロノスを使って、ウーラノスの性器を切って海に投げてしまう。その場に白い泡が集まり、その中から美しい女性が誕生したが、彼女が美の女神アプロディーテーだ。他ならぬキプロス島の沖合いだった。自分が作った彫刻像を愛したというピグマリオンストーリーもキプロスを背景にしている。
◆キプロスの英語発音はサイプロスだ。この島に多く自生するコノテカシワの名でもある。地中海からギリシャ東南側、トルコのすぐ下に位置しており、面積が南韓の10分の1ぐらいだ。韓国のように南北に分かれているが、現在南キプロスだけが国際社会で国として認められている。人口113万人に国内総生産(GDP)規模が235億7千万ドル(26兆3000億ウォン)しかないこの国が最近世界経済を牛耳っている。先週、ユーロゾーンの財務長官らがキプロスに対する救済金融支援策に合意してからだ。
◆ギリシャと密接な関係を結んでいるこの国は、ギリシャ経済が厳しくなってから一緒に事情が悪くなり、不渡りの危機に追い込まれた。昨年6月、救済金融を申請した後、先週末、債権団が提示した救済金融の条件がさらに問題になった。2万〜10万ユーロ(約2880万ウォン〜1億4400万ウォン)の銀行預金に対して、6.75%〜9.9%の税金を取り立てて返済するということだ。キプロスの預金主らはすぐ銀行へ駆けつけてこの条件が現実化する前に預金を引き出すと喚きたて、政府は銀行を閉鎖した。不信は一瞬にして取り返しがつかないほど広がった。スペイン、ポルトガルなど他の経済危機の国でも銀行預金を引き出せなくなるかも知れないという不安が広がって、欧州全域にバンクラン(bank run・取り付け騒ぎ)の兆しが現れた。
◆幸か不幸かキプロス議会がこの条件を全面拒否し、キプロス事態は新しい局面に入った。キプロス政府は徴税対象の預金を10万ユーロ以上へ引き上げて、国債を発行するなど、新しい案をまとめて議会に提出する予定だが、解決策を探せるかどうはか未知数だ。キプロス事態にはユーロゾーンの強国のドイツとロシアの感情争いまで交わっている。キプロスの預金の相当部分が低い税金と秘密保障についていったロシアのお金とされている。ドイツ人は「どうして我々がロシアのブラックマネーを保護するために、税金を納めなければならないのか」として、預金に対する税賦課を主張し、ロシアは「この全ての状況を駄目にしたのはドイツなどユーロゾーンだ」と反論している。地球の反対側の小さい島国のため、韓国の株価が急落するなど、数日間、株式市場が大きく動揺しているのだから、世界化時代を実感させられる。
申然鐏(シン・ヨンス)論説委員 ysshin@donga.com






