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[オピニオン]スペック差別

Posted October. 25, 2012 03:02,   

ソウル所在大学のA教授は、企業が入社試験の受験者たちに対してどんな差別をしているのかを研究するため、1900枚あまりの偽の入社志願書を提出し、業務妨害の容疑で警察の取調べを受けた。A教授の研究チームは偽の住民登録番号と写真を使って出身校、トイック(TOEIC)点数、性別、軍服務の有無など条件を変えた16種の偽の志願書を作成し、121社の今年下半期の新入社員採用に提出した。A教授は、警察の取調べに対し、「大企業の採用段階でスペックによる差別を測定するための研究の一環だった」と話した。

◆スペックとは、機械装備の性能明細書を意味する「specification」の縮約語で、就業に必要な資格条件を意味する。大学生らは、TOEIC点数、海外研修、資格、ボランティア活動、インターン経験を良く「スペック5種セット」と呼び、大学の成績とともに就職難を突破する万能のカギくらいの意味合いとして受け止められている。ある就業情報サイトによると、国内の主要企業合格者の平均TOEIC点数は852点、大学成績は3.7点、語学研修1回、資格1.8個、インターン経験1.1回、ボランティア活動0.9回、各種受賞歴1回だという。

◆A教授は、大企業が採用過程でどのようなスペックを重視しているのかを確認するため実験を用意した。たとえば、出身校と性別が同じ条件の場合、TOEIC点数が書類選考に与える影響を実際に検証してみるというものだった。スペック差別が、それだけ企業の現場に広く定着していることを物語る。大統領選候補らも「スペックを超えた青年就業センターを設立しる」(朴槿恵候補)「スペックがなくても夢を実現できる社会を作る」(文在寅候補)「スペック社会は正義がない」(安哲秀候補)と批判しているが、明確な対策は示せていない。

◆スペック中心の採用を批判ばかりしているわけにもいかない。ある大企業の人事担当者は、「成績、語学能力、海外研修、インターン経験のような長年にわたって積み上げた成果こそ、志願者を差別せず客観的に評価できる現実的な根拠だ」と言い、「見せ掛けのスペックは面接選考などを通して判別できる」と話した。就業コンサルタントらは「求職者たちが『どんな仕事をしたいか』ではなく『大企業で働きたい』といった風な漠然とした考え方をしているため、スペックが就職の狭き門を突破する道具に変質された」と指摘した。求職者の就業目標が職場でない職業に変わるとき、スペック差別を巡る議論も静まるだろう。

パク・ヨン論説委員 parky@donga.com