米国で初めて、薬物乱用による死亡者数が交通事故死亡者数を追い越した。18日、ロサンゼルスタイムズが米国疾病統制管理センター(CDC)の資料を分析した結果によると、09年基準で薬物死亡者は3万7485人で、交通事故死亡者の3万6284人を越した。薬物乱用で14分に1人が死亡する計算だ。人口10万人当たりの死亡者は00年6.7人から08年12.7人へと増えた。
よくコカイン、ヘロインなどの違法薬物による死亡者が多いと思われがちだが、実際は医師の処方を受けて薬局で調剤する鎮痛剤、抗うつ剤の服用で多く見られた。08年の場合、8年前の00年と比べ、ヴァリウム、ザナックスなどの抗うつ剤による死亡者は284%、ヴァイコディン、オキシコンチンなどの鎮痛剤による死亡者は256%増えた。一方、コカイン、ヘロインによる死亡者はそれぞれ68%、56%増加した。
調剤薬物は他の薬と併用したり、アルコールに混ぜて服用する場合、致命的な結果を招きやすい。米国の一部若者の間で流行する「カクテル薬物(パーティーで幻覚状態を楽しむため、複数の調剤薬物を大きな器に混ぜて大量に服用すること)」または中高年層が関節炎や筋肉痛の解消のため、鎮痛剤を服用し常習化して死亡するケースが増えている。カリフォルニア州薬局の場合、07〜09年、鎮痛剤調剤件数は43%以上増え、調剤量からすると50%近く増加した。
専門家は調剤薬物は違法でないという心理的な安堵感が乱用を煽っていると指摘している。また、製薬会社の攻撃的マーケティングによって医者の処方が必要な薬物を薬局で簡単に買える構造になっているのも原因として指摘されている。米国の場合、1981年、専門医薬品を消費者に直接広告できる「大衆(DTC・Direct to Consumers)広告」の規制が大幅に緩和され、「お医者さんに(この薬について)お問い合わせください」というメッセージの薬品広告をテレビでよく見かける。
製薬会社が錠剤だけでなく、パッチなど様々な形で調剤薬物を市場に売り出しているのも乱用を助長している。米国で人気の高い鎮痛剤のフェンタニルの場合、モルヒネより100倍以上の強力な薬効があるが、パッチと棒キャンディー状の形で販売されているため、使用が簡単だ。カリフォルニア州サンディエゴのある女性は、1日でフェンタニル・パッチを5つも身体につけ、薬物乱用で死亡した。このような調剤薬物はインターネットを通じても1個当り10〜80ドルで簡単に購入できる。
4月からホワイトハウス傘下の全米薬品統制政策局は、残った薬を自発的に返納する薬物収去(drug take-back)を施行し、習慣的に複数の医者に処方を求める「ショッピング型薬物中毒者」をモニターしているが、これといった効果が上げられずにいる。エイミ・ボナート・ミシガン大学医学大学研究員は、「消費者が鎮痛剤や抗うつ剤を簡単に手に入れられるのは良いが、これによる事故を防ぐ制度的枠組みがないというのが問題だ。現時点では薬物死亡を減らせる効果的な手立てがあまりない」と話した。
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