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[オピニオン]スパイ昆虫

Posted July. 14, 2011 07:17,   

野原で飛んでいた一匹の蝶が、電気柵や鉄条網を乗り越え、接近禁止区域に飛んできた。その蝶は花を見ても止まろうとしなかった。小川の水に一口も口をつけなかった。一週間の間、1キロ四方の区画を離れず、羽ばたくだけだ。するといきなり激しい北風が吹き、蝶の体は粉々になった。蝶の残骸を見つけたパトロール隊員は驚いた。金属の羽や電線で繋がれた胸部、バッテリー、発信機、光ファイバーケーブル…。この蝶の名前は、「パピリオ・パノプテス」。「全てのものを見る者」という意味の超小型無人偵察機だった。スパイ小説『ルールズオブディセプション』のワンシーンである。映画『マイノリティ・リポート』では蜘蛛型ロボットが家宅捜索を、ドラマ『アテネ』では、てんとう虫型ロボットが偵察兵の役割を果たしている。

◆「スパイ昆虫」が現実のものとなりつつある。試作品として開発されたハエロボットは、羽の幅がわずか3センチだが、極小型カメラやGPS受信機、無線伝送装置を搭載し、500メートルの上空まで飛ぶことができる。生きている昆虫に装置を埋め込むこともある。ゴキブリの触覚や筋肉に、遠隔操縦装置を植え込み、放射能への耐性を持たせた後、人間のスパイの代わりに、敵国の核物質を探知する任務を与える。

◆米空軍が最近、様々な形の無人航空機の模型を披露した。空軍研究チームは、蛾やトンボなどの昆虫の動きを真似た無人機10種類あまりを開発している。これらの無人機は、目立つことなく敵地に浸入することができるため、偵察任務に活用される予定だ。米軍はすでに、危険地域の戦闘に、小型無人偵察機を投入している。米警察は、犯罪防止や捜査に向け、13年から小鳥サイズの無人偵察機を飛ばし、疑惑がかけられた対象の自宅内で起こる出来事をくまなく監視することができるよう、立法手続を踏んでいる。同立法は、米社会にプライバシー侵害を巡る議論を巻き起こした。

◆スパイ昆虫が常用化すれば、戦場で死闘を繰り広げている軍人や様々な危険地域に飛び込まなければならない消防士らにとっては、福音となるだろう。しかし、「007」のように体を張って任務をこなしてきた職業スパイらは、にわかに職を失いかねない。他人の心配をしている場合ではない。梅雨時の雨が降り注ぐ窓際に鳥が飛び、一輪の花すらないベランダに蝶が飛び込めば、急いで窓を閉め、声を潜めなければならないだろう。

李亨三(イ・ヒョンサム)論説委員 hans@donga.com