ソウル中央地検刑事2部(アン・サンドン部長)は29日、4月「イーマート天ぷら粉」の中から死んだネズミ1匹が丸ごと発見された事件に関連し、この天ぷら粉を製造した三養(サムヤン)ミルマックスと、ネズミを発見したと届け出た金某氏に対して、いずれも容疑なしとして内偵捜査を終結したと発表した。
ネズミがどうやって天ぷら粉の中に入ったのか、その原因について突き止められなかったという点では「失敗した捜査」だった。しかし、3ヵ月間の捜査過程で検察と食品医薬品安全庁(食薬庁)は米ドラマの「CSI」で出る内容よりもっと精巧な科学捜査を行い、検察の内部では今回の事件の捜査を教科書にしてもいいほどと評価されている。
●ネズミの正体を明かせ
「彼女とから揚げを作って食べようとしたところ、ネズミが出てきた」という金氏の届け出の電話がイーマートにかかってきたのは4月27日。翌日、イーマートと三養ミルマックスは食薬庁にこの事実を届け出、食薬庁は検察の指揮の下、すぐ内部捜査に乗り出した。ソウル中央地検はこの事件を食品絡みの事件を専門的に捜査してきたユ・ヒョク刑事2部副部長に任せ、食薬庁も経歴10年以上のベテラン調査官を中心に調査チームを立ち上げた。
ネズミの正体を明かすのが急務だった。国立科学捜査研究所に送って遺伝子鑑識を依頼したが、住宅地や工場の近くで稀に見られるネズミだったため、生息地の特定ができなかった。剖検結果、内臓が乾ききっている上、胃腸からは食べ物が見つからなかった。
発見されたネズミと同じぐらいの大きさで生きているハムスターと死んだハムスターを同時に入れて天ぷら粉を包装してみたりもした。10日後開封したら、ひどい悪臭がした。当時発見されたネズミからは臭いがなく、カビもなかった。排泄物や毛も発見されなかった。調査チームは、このネズミが死んだ後長時間が過ぎて乾いた状態で天ぷら粉の中に入ったと、暫定結論を出した。
●製造の過程で入ったのか
自ら動けないネズミが入ったとしたら、製造過程で問題があった可能性が高い。三養ミルマックスの衛生点検記録を調べて、工場の近くでネズミが1〜2匹発見されたことが分かった。
調査チームは5月初め、忠清南道牙山市(チュンチョンナムド・アサンシ)にある三養ミルマックス工場を直接訪れ、製造施設を隅々まで点検した。天ぷら粉の製造工程は無人自動化システムで運営されていた。
小麦粉など、原料がサイロの中へ入ると、パイプに乗って計量器、混合機などへ送られた後、自動包装される。この時、空気中に露出されるのはただ1回。しかし、それぞれの段階ごとに横縦1.5ミリメートル大の微細な穴の篩を通過するようになっているため、6センチ大のネズミが入り込む可能性は大きくなかった。
製造設備が当初の設計と違う点があるのか、問題の天ぷら粉が製造された昨年9月17日にも同じ設備が整えられていたのかについても調べたが、問題点は見つからなかった。調査チームは製造過程に実験用マウスを直接入れてみたりもした。生きているネズミは包装の段階ですぐ選り分けられた。窒息死させたネズミと乾燥されたネズミはエックス(X)線通過段階と重量測定段階で摘発された。勤務者がX線の感度と重量測定機を任意で操作するのも不可能だった。
●誰かわざと入れたのか
捜査の焦点は誰かが直接このネズミを天ぷら粉の中に入れた可能性に移っていった。三養ミルマックスに不満を持っている会社社員である可能性もあり、流通段階に関わるイーマートの社員である可能性もあった。届け出た金氏が金目当てにネズミを入れた「ブラック・コンシューマー」である可能性も無くはなかった。
6月15日、食薬庁がこの事件を検察へ送致したことで、検察は製造日当時、三養ミルマックスに勤めていた社員と流通段階に関わったイーマートの社員数十人を呼んで取り調べを行った。しかし、製造設備を操作したり無理やり袋を開いてネズミを入れることも不可能であることが確認され、流通過程でわざと包装を破った情況も発見できなかった。
検察は最後の段階で6月24日、金氏の自宅を押収捜索した。ネズミを発見した当時、交際女と一緒にいたという金氏の主張が事実と異なることが分かったためだ。しかし、押収した携帯電話から復元されたショートメッセージは、金氏の無嫌疑を証明した。
30分間約10回にわたって交際女とやり取りしたショートメッセージには、天ぷら粉の中からネズミを発見した交際女の驚きと恐怖、金氏が交際女を落ち着かせるためにかけた言葉がそのまま残っていた。結局、事件は迷宮入りしたまま、検察は事件の関係者に対し、いずれも「容疑なし」と結論付けた。
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