ハンファグループの金升淵(キム・スンヨン)会長は今春、ハーバード、イェール、MIT、スタンフォードなど、米国の名門大学の在学生たちを対象にグループのグローバル・ビジョンを説明し、「うちの会社に来てほしい」と呼びかけた。三星(サムスン)、LG、現代(ヒョンデ)自動車のような大企業の最高経営者(CEO)たちも、グローバル人材を確保するため、自ら海外に赴いている。ソウル大は韓国一の名門大だが、世界の人材市場では日本の東京大はもちろん、シンガポール大や中国の北京大より低い評価を受けている。
◆5月はじめに行われたソウル大の総長選挙の過程を見ると、同大学がはたしてグローバル人材育成先としての役割を果たせられるのかという疑念が生じてしまう。候補者3人いずれも、「世界リーディング・ユニバーシティ」をビジョンとして掲げたが、いざふたを開けてみたら、票を集めたのはポピュリズム的な公約だったという分析だ。候補番号1番の吳然天(オ・ヨンチョン)教授は、「学者としての原則論より現実的な対処能力が大事だ」と、財政の重要性を強調した。特に、「年俸3000万ウォンアップ」の公約を歓迎した教授たちが多かったという。もちろん吳教授が、最大得票数を獲得したのが、年俸の引き上げ公約によるものばかりではなかっただろうが、一部からは「韓国一の知性であるソウル大教授らがポピュリズムに惑わされるものだから、有権者が耳よりな『総花的公約』に引かれるのも無理はなさそうだ」と嘆く向きもある。
◆米経済がいくら揺らいでも、米国がこれからも相当期間、トップを維持できる理由の一つが米大学の競争力だ。知識が富を創出する時代で、国家競争力は大学が牽引する。経済規模10位圏の大韓民国ならば、最低2〜3の世界的な名門大学が出るべきだ。現在、国会で継続審議となっているソウル大法人化法案が成立すれば、新任総長は予算と人事権まで持ち、歴代総長のうち、一番莫大な権限の持ち主になる。しかしその分、責任も大きくなる。法人化の目標が競争力アップにあるだけに、教授たちと真正面から対立することも多いだろう。
◆吳教授が来月2日、第25代総長に正式に就任する。彼は、「ソウル大が量的成長から質的成長の成熟段階へと進むように、渾身の力を注ぐつもりだ」と語った。先進国の入り口に立った今、ソウル大総長の使命は、ソウル大の競争力を世界並みに引き上げることだ。ところが、今回の選挙過程を見る限り、彼が果たしてそのような期待に応えられるかという懸念が拭えない。国民の税金で運営されるソウル大を改革することには、ソウル大の構成員の利害を超え、国の命運がかかっていることを吳教授は肝に銘じるべきだ。
金順鄹(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com