菅直人新内閣に対する支持率が最高68%まで上昇した。政権発足当時の支持率では、歴代5位だ。わずか1ヵ月前の鳩山由紀夫内閣の支持率22%に比べて46ポイント上昇した理由は何か。
何よりも菅内閣に対する期待と菅首相の脱小沢人事などの党と政府の人材刷新が、国民の評価を受けたためだろう。また、人気とは距離があっても外交分野や経済分野で現実主義路線を取ったことも無関係ではないと、専門家らは分析する。
菅首相就任後、日本民主党が現実主義路線に急旋回している。菅首相は17日に発表した参議院選挙公約で、「強い経済と強い財政」、「対米関係の深化」など、いわゆる保守的価値を前面に押し出した。昨年8月30日の衆議院選挙で、成長よりも福祉、対等な日米関係を掲げた公約とは180度変わった。菅首相は、政治的盟友の鳩山内閣の政治を継承することを強調しつつも、政策の方向は、鳩山前首相を反面教師としているかのようだ。しかし、来月11日の参議院選挙を控え、突然の政策転換に党内から反発が出てきている。野党からは、「与野党の政策が見分けがつかない」という反発も強い。
●理想主義から現実主義に
菅首相が、経済政策と外交安保政策で現実主義に大胆に旋回したことは、鳩山内閣との差別化が至急だと判断したためだ。民主党は、昨年の衆議院選挙で、「コンクリートから人へ」、「対等な日米関係の構築」というマニフェスト(政権公約)で、事実上、初めての政権交代を果たした。しかし、鳩山首相は、国民の感情に訴え、有権者の心をつかむことには成功したが、具体性が欠けたマニフェストは徐々に動力を失い、70%台あった支持率は8ヵ月後に10%台に落ちた。菅首相は、「政策を出すだけでまとめられない」鳩山内閣からの脱却が切実だったのだ。
特に、菅首相の現実主義路線は、今回の選挙マニフェストで、いわゆる「生活の問題」と言える経済と財政政策に重点を置いているという点でもよく表れている。財務大臣を務め、財政の健全性が最悪の状況であるため、格別の措置が必要だと理解したのだ。菅首相は、財務大臣在任当時も、「国家予算をこれ以上、国債発行だけに依存できない」として、鳩山首相の反対を押し切って、消費税引き上げ論に火をつけた。実際、日本の財政状況は、正常な国家と見ることができないほど借金が深刻だ。日本銀行が集計した3月末現在の資金循環統計によると、国債と地方債を合わせた国の借金は、1001兆7715億円(約1景3000兆ウォン)で、国内総生産(GDP)の2倍に達する。
代表的な反官僚主義者とされる菅首相が、就任当時、「官僚こそ政策のプロ」と言って官僚重用説を取り上げたことも、現実主義転換の断面だ。鳩山内閣で、政治優位—脱官僚政策を推進したが、官僚の心理的離脱を招き、国政運営が支障を来たしたと考えたのだ。このため、菅首相は、政治主導の意味を「官僚と情報を共有して一つになる」ことだと再解釈した。
●保守的価値への回帰…野党からは反発
実際、参院選マニフェストを具体的に見ると、均衡よりも成長、福祉よりも税収の優先確保など、保守的な価値を強調している点が目につく。特に、現行5%の消費税率を10%に引き上げるなど、大々的な税制改革案を掲げた。マニフェストには、「消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始する」とだけ明記されているが、菅首相は、マニフェスト発表の記者会見で、10%引き上げ案を具体的に提示した。
鳩山内閣では宣伝的な水準にとどまっていた中期経済成長率の目標値と基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を具体化しているという点も目につく変化。菅首相は、20年までに平均名目成長率を3%以上達成し、国債発行による利子費用と収入などを除いたプライマリーバランスの黒字化を達成すると明言した。また、これまで論議を呼んできたガソリン暫定税率の廃止と高速道路無料化の実施などは見送られた。福祉公約の「子ども手当て」も、当初目標の月額2万6000円の満額支給を見送り、1万3000円を維持する方針だ。
普天間問題で、米国と不協和音を生んだ日米外交安保路線も、親米現実主義路線に方向を定めた。鳩山内閣は、在日米軍基地の再検討を公約に入れたが、菅内閣は、普天間基地を日米合意を前提に辺野古地域に移転することにした。
しかし、民主党の保守回帰戦略に対する反発もある。消費税引き上げに対しては、党内からすら首相が先走りすぎているという不満が出ている。野党第一党の自民党では、「昨年、ばらまき公約を掲げて政権を取った民主党が、こっそりと公約を撤回し、成長と経済という保守的価値に向かっている」と反発している。いっぽう、日本のメディアは、民主党のマニフェスト転換を肯定的に評価しながらも、実際に転換が可能かについては判断を保留している。来月11日に予定された参議院選挙で単独過半数を獲得できず、連立政府を構成することになる場合、政策推進の動力を失う可能性があるためだ。
changkim@donga.com