風は冷たく、体は疲れた。生まれて2度目、韓国では初めて参加する国際マラソン大会。しかし、記録は最初より21分が縮まった4時間15分だった。
「マラソンは経営と似てますね。多く準備するほど記録は裏切りませんよ。走る時は辛く、ひどく疲れますが、完走したときはものすごい達成感を感じることができます」
「第2の孫正義」と呼ばれ、日本企業としては初めて韓国証券市場に上場したネプロITの金井孟会長(48)は21日、2010ソウル国際マラソン大会兼第81回東亜(トンア)マラソン大会で完走したあと、このように語った。金井会長は、在日韓国人3世として日本で成功した韓国系企業家の中では、ソフトバンクの孫正義会長に次ぐ有名人だ。
日本の東京証券市場に上場したネプロジャパンの代表取締役で、日本で携帯電話の40店舗を運営しており、ネプロITを始め、子会社だけでの5社、持分を投資した7社を傘下に従えている。
1995年にネプロジャパンを設立しており、ほぼ1年に1社の割合で会社を増やしてきた。グループ全体の昨年の売り上げは130億円(約1625億ウォン)、営業利益は3億5000万円(約44億ウォン)。昨年4月、子会社をコスダック(店頭市場)に上場し、韓国と日本に同時上場した最初の会社として、日本でも話題となった。
金井会長が、モバイルコンテンツ事業を行うネプロITを韓国証券市場に上場した理由は、ある面では当然だった。
金井会長は、「日本証券市場は活力を失っている一方、韓国証券市場は電子技術(IT)業種が特に活況を示しており、アジアで世界証券市場と肩を並べているためだ」と言い、「今後、韓国と日本を繋ぐビジネスを開拓したい」と語った。ネプロITは、韓国事務所を今後法人化する計画だ。韓国の優れたITと日本のさまざまなコンテンツとを結合させるという抱負を持っている。
韓国と日本証券市場の活力の差を感じる部分は、ネプロジャパンとネプロITとの時価総額の差。06年に上場されたネプロジャパンの時価総額は先週末基準で120億ウォン程度で、ネプロIT(約240億ウォン)の半分だ。金井会長は何よりも積極的な投資家マインドと爆発的な出来高を、その差として取り上げている。
株価が下がる兆しを見せれば、韓国事務所だけでなく、日本にまで韓国投資家からの電話がかかってくる。昨年、上場直後、ソウル江南(カンナム)でタクシーに乗ったが、韓国語が下手な金井会長が、「会社上場のため、韓国に来た」と話すと、運転手から、「ひょっとしたら、ネプロITではないか」と聞かれたこともある。
金井会長は「韓国伝道師」でもある。日本企業の中で韓国証券市場に関心の多い企業が、金井会長を訪ねてきたら、韓国証券市場の長所などを説明する。最近、コスダックに上場予備審査を申し込んだクリック証券も、氏から上場手続きを巡り多くの手助けを受けた。
金井会長は、「韓国証券市場に関心を示す日本企業は非常に多い。友人が立ち上げた会社も、6、7月ごろ、上場予備審査を申し込む予定であり、自分の知っている限り、3〜4社の日本企業が韓国証券市場への上場を考慮している」と伝えた。
「資本主義の花形」と呼ばれる証券市場は、一国が経験してきた資本主義の歴史を盛り込んでいるというのが、金井会長の哲学。その点からみれば、韓国証券市場はこの数年間の業績、すなわち「利益」がもっとも重要な指標だ。一方、日本の証券市場は利益よりはむしろ「会計の透明性」のような事後管理をさらに重視している。
在日韓国人3世ともなれば、どうしても韓国語が下手なのが当然だが、金井会長はインタビューに「ほぼ」支障がないほど、韓国語がうまい。慶尚南道昌原(キョンサンナムド・チャンウォン)が故郷の祖母と父親から多くの韓国語を教わり、今は職員となった韓国人留学生から別に教えてもらった。
金井会長は、「在日韓国人らが、韓国人だということを気兼ねなく明かすようになったのは、ドラマ『冬のソナタ』の鞖勇俊(ペ・ヨンジュン)さんが大きな人気を博し始めてからだ」とし、「日本には特に最近、三星(サムスン)電子やLG電子がソニーを抜き、金姸兒(キム・ヨンア)選手が浅田真央に勝つと、『いつの間にか、韓国を日本を抜いた』という驚きや賛嘆のまなざしがある」と紹介した。
このような日本のまなざしに応え、韓国の株主らに恥ずかしくない会社に作りたいと話した。
「買収合併(M&A)などを通じて付加価値を高め、注目を集める会社を作り、ほんとうに『第2の孫正義』になりたいですね」。まだまだ足りないという謙遜や誓いの言葉だった。
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