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女性脱北者が自伝小説「人間でありたい」を出版

女性脱北者が自伝小説「人間でありたい」を出版

Posted March. 18, 2010 04:08,   

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金氏は、結婚して間もなく、夫が80年代初めから北朝鮮の核開発に加わっていた事実を知った。夫は、北朝鮮のラジオ放送などメディアが、「米帝と南朝鮮の傀儡当局がありもしない核を取り上げ、我々を威嚇している」と主張するたびに、「ありもしないだと?僕が作っているのに…」と批判した。夫は、新婚当初から、平壌市(ピョンヤンシ)郊外の科学者住宅団地の家に金氏を残し、平安北道(ピョンアンプクト)や咸鏡北道(ハムギョンプクト)の坑道内部に設置された核開発研究所で作業し、3ヵ月ごとに帰ってきた。

金氏は、98年に夫を残し、中国に逃げるまで、放射能にさらされた夫の体と心が、崩壊していく姿を目撃したという。夫の赤銅色の皮膚がめくると、白い皮膚が現われた。肝硬変がひどくなり、顔が浅黒くなり、黄疸症状が現れた。歯が抜け、40代ですでに入れ歯をしていた。夫は、毎晩銃に撃たれる悪夢を見て、起きている時も幻覚症状が現れた。金氏は、「核開発の事実を秘密にするという上部の指示を受け、精神を病んだようだ」と話した。

夫は、苦しみを忘れるため、3日間昼夜を問わず酒を飲み、別の女性に慰みを求めた。金氏は、金日成(キム・イルソン)主席の死去後、北朝鮮に吹き荒れた経済危機を称する「苦難の行軍」より、核開発で壊れていく夫を見て、北朝鮮体制に幻滅したと振り返った。金氏は03年、中国公安に逮捕され、北朝鮮に送還後、06年までの3年間、国家安全保衛部の教化所(刑務所)に入れられ、体制の抑圧と暴力を経験した。そして、北朝鮮が1回目の核実験直後の07年、韓国での生活を選んだ。

金氏は、韓国に来るまで数回にわたり、性的虐待を受けた。スパイに仕立て上げられ、保衛部に逮捕された夫を救うために、知人を通じ、保衛部の幹部に請願するため、2人の男に体を許さなければならなかった。金氏は、当時の経験について、「夫も救い、おまけに世間のことも知ることができ、損しただけではなかった」と冷ややかに語った。中国で逮捕され送還された後、教化所の女性幹部に身体検査を受ける侮辱は、当時の恥かしい経験に比べれば何でもなかった。

金氏は昨年11月、屈曲した自分の人生を書いた自伝小説『人間でありたい』を出版した。これまでの脱北者の手記が、北朝鮮体制への批判など政治中心的だった反面、金氏は、無力な一知識人女性が、愛する夫と祖国に背を向けることになる過程を穏やかな小説体で描写した。金氏は、「夫に対する最後の礼儀として、書けなかった話が多い」と語った。また、金氏は、「北朝鮮社会が、平凡で素朴な小さくて弱い人々が、人間たる価値をもって生きることができる世の中にならなければならないという思いで本を書いた」と話した。

97年に脱北した元北朝鮮労働党秘書の黄長鎏(ファン・ジャンヨプ)氏は、「これまで、脱北者が出した手記と比較し、文学性に優れた名作だ」と語った。黄氏は書いた推薦文で、「金同志の作品は、首領独裁の憤りを禁じ得ない蛮行、試練を勝ち抜いた人民の良心の勝利に対する歴史的叙事詩だ。それは、金正日(キム・ジョンイル)独裁の非人間性と反人民性を最も真剣に、最も良心的に、最も躍動感のある芸術的な絵画で実証した不朽の名作だ」と絶賛した。



kyle@donga.com