＃１〓米大リーグ・ボストンのベテラン投手、ティム・ウェイクフィールド（４３）。不惑を越えた年に初めて、オールスターに選ばれた。１５日、セントルイスで行われるオールスター戦に出場する。今季前半だけで１１勝（３敗）を挙げ、大リーグ最多勝利の首位タイになった。
＃２〓昨年１１月、高校２年生だった吉田えり（１７）は、関西独立リーグのドラフトで、７位に指名され、神戸のユニホームを着た。日本プロ野球史上、初の女性選手の誕生だった。
２人の選手が、年齢と性別のハンディを乗り越えられたのは、ナックルボール（Knuckle ball）のおかげだ。内野手としてマイナー・リーグに入団したウェイクフィールドは、「そのぐらいの実力では、ダブルＡ以上は厳しい」というあるスカウトの言葉に刺激され、ナックルボール投手に変身し、１９シーズンの間、１８９勝を挙げた。吉田えりも、ナックルボールがなかったら、プロ選手になれなかったはずだ。
●魔球中の魔球
投手と捕手がサインを交換する理由は、どのボールを投げるか、打者に気付かれないようにするためだ。しかし、ウェイクフィールドもエリも、これ見よがしにナックルボールを投げる。打者も百も承知だが、なかなか当てられないのがナックルボールだ。
ナックルボールは、人差し指と中指の関節（ナックル）をボールに当て、押し出すように投げる球だ。ウェイクフィールドは、人差し指と中指の爪を使う。このように投げると、球は回転はしないものの、打者の前で自由自在に動く。投げる投手も受ける捕手もどこへ動くか分からない。そのため、魔球中の魔球と呼ばれる。ウェイクフィールドのナックルボールの球速は、時速１００キロ前後だ１５０キロの球も簡単に打ち返す大リーグの打者も、まるで蝶のように舞い踊るこの球にはお手上げだ。たまに１２０キロ台の「速球」のストレートを組み合わせると、手の打ちようがない。
●ナックルボールの明暗
ナックルボールは、動きを予測できないため、捕手も取りにくい。ボストンの捕手、ジェイソン・アンドリュー・バリテックは０５年、ポストシーズンで、よくウェイクフィールドの球を後ろへ落とした。バリテックは、「ナックルボールを取るのは、箸でハエを取るようなものだ」と語った。球団は、ナックルボールを取るための捕手を別に置いている。００年代の中盤まではダグ・ミラベリが、今年はジョージ・コッタラスが捕手を務めている。
ナックルボールは気温と湿度、高度、風などに影響される。曇りの日にはナックルボールがうまくいくが、高地帯ではバッティングボールになったりもする。ウェイクフィールドも好調な日は天下無敵だが、そうでない日は乱打を食らうことがよくある。ナックルボールは、他の変化球と違い、肘や肩にほとんど無理がかからないというメリットがある。一度に２００〜３００本の投球も簡単に可能だ。「名誉の殿堂」入りしたフィル・ニークロは４８歳まで活躍し、３１８勝を上げた。
●韓国プロ野球のナックルボール投手
韓国プロ野球には、まだナックルボール選手は登場していない。ヒーローズのチャン・ジョンソク１軍マネージャーは０３年、ＫＩＡで外野手からナックルボールの投手へ転向したが、失敗した。チャン氏は、「結局、制球が問題だった。球の動きは良かったが、思い通りのストレートを投げることができなかった」と語った。ヒーローズの馬一英（マ・イルヨン）は、昨年からナックルボールを投げているが、１試合に２〜３球に過ぎない。この球を多く投げると、ストレートのスピードが落ちるため、コーチも選手も多く投げることを望まない。
現在は、ＬＧの左腕投手、金京泰（キム・ギョンテ）が、ナックルボール投手に一番近い。主に中継ぎとして登板する彼は、半分ぐらいをナックルボールで投げる。彼は、「初めから真ん中を見て投げる。磨きをかけている段階だ。絶えず、２年ぐらい練習し続ければ、ナックルボール投手に変身できそうだ」と語った。
●選ばれた者のみが投げられる
ナックルボール投手になるまでは、相当な忍耐と努力が求められる。その中でも、爪がまさに生命とも言える。金京泰の場合も、人差し指と中指の爪が何度も割れ、爪の中にアザができたこともある。球をきちんと爪に当てるためには、楕円形の爪を平たくするのも必要だ。だから、金京泰は毎朝、ひげを剃るように、丁寧に爪を平たく整える。３日に１度は、爪の栄養剤も塗る。このような修練を経ても、ナックルボール投手として成功する選手は、選ばれた小数に過ぎない。できそうでできないナックルボールは、大多数の選手には絵に描いた餅であるわけだ。
uni@donga.com
About Dong-A Ilbo