8日「社団法人・時代精神」が主催した討論会「民主主義とは何か」で、高麗(コリョ)大学の任爀伯(イム・ヒョクペク)教授は、「政治的自由と平等、参加と競争、法の支配などを民主主義の内容と考えると、李明博(イ・ミョンバク)政権では、韓国の民主主義は後退している」と主張した。一方、韓国教員大学の金周晟(キム・ジュソン)教授は、「民主主義が後退しているという根拠はない。憲法を守ろうとせず、これを取り締まれば、民主主義が後退したと主張する」と反論を説いた。
最近、数校の大学の一部の教授が発表した時局宣言は、いわゆる進歩とされる任教授の考えと別段違いはない。時局宣言の教授らが、民主主義の危機の根拠として提示したのは、ソウル広場の封鎖とメディア関連法整備の推進、盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領に対する捜査などだ。果たして、これが民主主義危機論の合理的な根拠になるのか。
国家人権委員会と左派陣営は、ソウル広場の封鎖を集会デモの自由に対する重大な侵害と主張するが、金大中(キム・デジュン)、盧武鉉政権も不法暴力が予想される大規模集会デモを禁止した。99年5月の韓国大学総学生会連合の発足式、00年4月の自動車4社のソウル都心車両デモ、01年の全国民主労働組合総連盟の富平(プピョン)駅労働者大会、韓米自由貿易協定阻止汎国民運動本部の06年11月のソウル広場総決起大会、07年3月のソウル都心デモも、全て警察の封鎖で阻止され、実現しなかった。
ソウル広場、清渓(チョンゲ)広場や大漢門(テハンムン)前の人道は、特定集団の専有物ではない。自分の自由が大切ならば、他人の自由と平和も大切だ。集会デモの自由は最大限保障されなければならないが、公共の安泰と秩序を脅かし、他人の幸福権を侵害する暴力は、憲法も保障しない。マスクをつけ、鉄パイプで武装したデモ隊が、3ヵ月以上ソウル都心を麻痺させた昨年のろうそくデモは、私たちが志向すべき民主主義ではない。
メディア関連法の再改正を反対し、左派メディアの既得権だけを保護することも、民主主義を守ることとは程遠い。現行の放送体制は、全斗煥(チョン・ドゥファン)独裁政権が超法規的に断行した80年の言論統廃合の遺産だ。新規放送局の進出機会の拡大と競争の強化という時代の要請に合わせ放送体制を改編することが、なぜ民主主義を危機に陥れるというのか。放送体制の改編が、新しい産業の花を咲かせる可能性もある。その上、メディア関連法は、今年3月に与野党が6月国会で採決することで合意している。
盧前大統領の不正容疑に対する捜査が進んでいる時、左派メディアも失望感を示し、徹底した捜査を求めた。今になって「政治報復」、「政治的他殺」云々と言うことも、つじつまが合わない。検察の捜査過程に一部問題があったと批判することはできるが、前職大統領だからといって、不正容疑があっても捜査することができなければ、法治主義に対する不正である。
時局宣言に賛同した教授には、左派性向の市民団体または民主化に向けた全国教授協議会所属が多い。左派政権に友好的だった教授らが、盧前大統領の死を機に、保守政権を萎縮させ、自らの勢力を育てようとする政派的な考えで出発したのが、最近のリレー声明だとみられる。知識人として、時代の状況判断において、客観性と合理性、バランス感覚を備えていないと判断される。今、韓国の民主主義は、むしろ左派勢力の独善と暴力デモ、そして議会民主主義に対する不正で、危機に直面している。