林采珍(イム・チェジン)検察総長が3日、辞表を提出した。林総長は、「最善を尽くしたにもかかわらず、想像できなかった出来事により、多くの国民を悲しませる結果を招いた。今回の事件捜査を総指揮した検察総長として、心より国民にお詫びする」と、「辞任の弁」を明らかにした。そして、「人間的な苦悩で、平常心を維持できない私が、検察を指揮し続けることは不適切だと判断した」と付け加えた。
林総長の苦しい心境は、十分に理解できる。林総長は07年11月、任期を3ヵ月残した盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領から検察総長に任命された。任命権者に対する捜査を指揮すること自体、重圧を感じただろうし、捜査中に発生した盧前大統領の自殺は、青天の霹靂だっただろう。しかし、盧大統領の自殺の責任を検察に問うことは、左派団体と左派言論が、検察に責任を負わせ、無力化させようという政治的攻勢にすぎない。2年の任期が保障された検察総長が、国民が注視する捜査が終わる前に辞表を出したことは、適切ではない。
李明博(イ・ミョンバク)大統領の側近であるセジュンナモ旅行の千信一(チョン・シンイル)会長に対する裁判所の拘束令状の棄却も、林総長の辞表提出の決意に影響を及ぼしたようだ。千会長の令状が棄却され、検察が不十分な捜査、無理な捜査、あるいは別件捜査の論議に包まれることも心配しただろう。しかし、朴淵次(パク・ヨンチャ)被告の救済のため、税務調査中止ロビーだけでなく、多くの前・現職の国会議員や判事・検事、地方自治体長など主要な公職者に対する捜査が、まだ残っている。林総長は、野党や「ろうそく勢力」の攻勢で、押されている検察の境遇を深く熟考すべきだった。
野党民主党は、法務長官、検察総長、最高検察庁中央捜査部長の罷免要求し、捜査チームを被疑事実公表罪で告発した。さらに、捜査過程に対する国政調査と現政権の側近に対する特検捜査、中央捜査部の解散まで主張する、まさに全方位的な検察攻撃に乗り出した。林総長の辞表が、野党の攻勢に力を与える結果をもたらしてはならない。
林総長は、盧前大統領の死去当日にも辞職願を提出したが、金慶漢(キム・ギョンハン)法務部長官で返されている。今回は林総長の意志が固く、思い直させることができなかったようだ。検察総長を新たに任命するには、検証手続きと国会人事聴聞会が必要なので、少なからず時間が必要となる。検察は、新しい検察総長が任命されるまで、文晟祐(ムン・ソンホ)最高検察庁次長と李仁圭(イ・インギュ)中央捜査部長を中心に、朴淵次被告関連捜査を揺ぎなく進めなければならない。