韓国社会において官僚と企業は、典型的な甲と乙の関係だ。そして、この不平等の構造を支える力は、まさに公職社会が握る企業規制から生まれる。企業家たちは、「規制が公職者の仕事で、民間を縛りつける権勢の源泉だ」と指摘する。李明博(イ・ミョンバク)次期大統領も、一線企業の最高経営者(CEO)を長く務め、官僚たちが振り回す規制の弊害を身にしみて経験したはずだ。
李次期大統領は22日、毎日経済新聞主催の会で、公職社会に向けて「この時代に障害になるほどの危険水位に達したようだ」と述べた。そして、「韓国企業が道さえ明ければ実にうまくできるのに、角をすべて塞いだ」と企業規制を強く批判した。規制による社会的浪費と企業の不平に対して抱いていた平素の考えを率直に吐露したのだ。
ある企業関係者が最近、私的な席で、「政権が変わる度に官僚社会の図体が大きくなるが、一度も小さくなったことがない。今度こそ、肥大した政府を小さくする機会だ」と話していた。規制対象者の乙の立場で甲を改革することは初めてで、官僚社会の抵抗が強い。李次期大統領は、「ある省庁は、傘下企業の経営者を動員して引継ぎ委員を訪れ、自分の省庁をなくさないようロビーをする古い手法を使っている」と叱咤した。
政府が、あちこちで詰まった「電柱規制」だけを抜いても、製造業が海外に脱出する現象は減ると財界は訴える。経済専門家たちは、世界で最高の競争力を備えた造船、鉄鋼、工作機械などの重厚長大な産業も、政府が足を引っ張らなければ、10〜20年は大韓民国の成長を率いることができるという。
最近、オートメーション工場では人が見あたらない。雇用が製造業よりも3次産業でより多くつくられる時代だ。ある企業関係者は、「ゴルフ場18ホールをつくっても、200の雇用が生まれる。しかし、ゴルフ場を完工するまでに、今も印鑑1000個が必要だ」と述べ、規制共和国の現実を告発した。根本的に、公職社会を縮小する大手術をしなければ、印鑑1000個は減らない。
病院や教育も産業と見て、規制を解く必要がある。韓国の高級医療人材をもとに世界の裕福な階層を対象にした営利病院法人がつくれない理由はない。世界10位圏の経済大国で、世界トップ200の大学に入ったのが、ソウル大学(51位)と韓国科学技術院(KAIST、132位)の2校だけだ。韓国の大学は人材を選抜して凡才にすることで名高い。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府は5年間、大学入試規制を握り、大学を下向平準化する作業に没頭した。08学年度大学入試で混乱を巻き起こした修学能力試験(日本のセンター試験に該当)等級制の波紋も、盧政府の平準化コードから始まったのだ。
22日に引継ぎ委が発表した「大学入学試験3段階自律化方案」は、約40年ぶりに政府が大学入試から完全に手を引く内容を含んでいる。大学入学試験の統制から自律への一大転換をする時代史的意味が大きい。大学は、大韓民国の未来の競争力だ。大学規制を解いてこそ、世界的な大学が多く輩出できる。
規制は、ダイナミックコリアの成長動力を引き下げる主犯であり、官僚組職は規制の産室である。李次期大統領は揺るぎなく初心を維持し、政府組職と規制の縮小を完結しなければならない。李次期大統領は、「1ヵ月間、国政を隅々まで見た。こんなに詰まった所が多いのに、ここまで来られたのは実に奇跡だ」と述べた。ならば詰まった所を解き、新しい奇跡をつくり出すことだ。






