米ロサンゼルスの広告会社の社員、ダニエルは36歳の誕生日の記念で、オープンカーを購入し疾走したが、反対側からのトラックと衝突し死亡した。亡者の魂の行った所は「審判の都市」という生と死の中間世界。そこの裁判官は現世での亡者の生を撮っておいた映像を見ながら地球よりもっと良い星に送るか、また地球に返すかを審判する。基準はどれほど「恐ろしさ(fear)」なしに生きたかだ。裁判官は言う。「恐ろしさが少なかった人々は賢かった人々だ。生の平穏や知恵は恐ろしさがない時に生まれる。幸せ、楽しみ、自信感のような感情を隔てる最大の敵がまさに恐ろしさだ」米国の映画『魂の愛』に出る話だ。
◆金姸兒(キム・ヨンア)が15日、イタリアのトリノで開かれたフィギュアグランプリファイナルの女子シングルのショートプログラムの第1ラウンドで、ライバルの日本の浅田真央を抑えたのも、恐ろしさを勝ち抜いた内面の力のお陰だった。両選手は3回戦の空中ジャンプで同じミスをした。浅田は慌てて次のジャンプができず退場したが、金姸兒は違った。物静かに高難度のジャンプを続けた。優勝後、金姸兒は「(心は)搖れたが、ひたすら次の動作だけを考えた」と話した。
◆恐ろしさは生と死も分ける。20年間、末期の癌患者らを見てきたソウル大学医学部の方英柱(バン・ヨンジュ)教授は、「癌も結局、恐ろしさとの戦い」と言う。病気が与える肉体の苦痛より絶望が与える心の苦痛が患者を蝕む場合が多いというのだ。癌通知を受ければ、普通は虚無感と怒り、自責、死についての恐怖で心が弱くなって生の意志を失ってしまうという話だ。
◆恐ろしさを無くすことは言葉のように簡単ではない。神様ではない限り、多くの人は映画『色、係』の男子主人公のように内面の恐ろしさを押えつけながら、それでも生き残らなければならないという気持ちで堪えていくのではないか。「心の平穏を追求する人々に必要なのは完成の不可能さを認めるが、ただ努力する謙遜」というアリストテレスの言葉を慰めに。
許文明(ホ・ムンミョン)論説委員 angelhuh@donga.com






