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[オピニオン]「グランド・ゼロ」

Posted July. 10, 2007 03:05,   

1977年に上演された演劇「アイランド」を覚えている人は多い。6ヵ月のロングランという当時としては驚異的な興行記録を残した。演出を務めた尹浩鎭(ユン・ホジン、ミュージカル「明城皇后」製作者)氏は、「南アフリカ共和国の人権問題を題材にしたなじみのない外国の作品だったのに、観客が殺到し、劇団もびっくりした」と話す。俳優たちのセリフには、人権抑圧への鋭い風刺が盛り込まれていた。朴正熙(パク・ジョンヒ)独裁政権下の韓国の現実を重ねてみた観客は大きな拍手を送りながら以心伝心で民主化を熱望した。それから2年後、朴正熙政権は崩壊した。◆演劇の醍醐味はやはり「風刺」だ。権力や不条理に鋭い矛先が向けられると、観客はカタルシスを感じる。韓国の民主化が実現してから、長い間、風刺劇は姿を消し、軽い演劇が舞台を占めていた。8日終演となった演劇「グランド・ゼロ」は風刺劇復活ののろしだ。29世紀、木星の衛星である「ガニメデ」を舞台にしているが、誰がみても北朝鮮の核への風刺であることは明らかだ。◆あらすじは次の通り。人類が移住してきたガニメデは、東西に分断されている。民族社会主義を掲げるウェスト・ガニメデの総統は、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)を連想させる。自由民主義体制のイースト・ガニメデの大統領は支持率アップに躍起になって、次から次へと大衆迎合的な政策を展開する。「経済以外は何の問題もない」というウェストは、核開発のために、イーストから資金を奪い取る。結局、核兵器が爆発し、国全域が「グランド・ゼロ(核爆弾が投下された爆心地)」と化してしまう。◆この演劇の製作者は、左派志向の強い文化界で少数派の右派小説家、卜鉅一(ボク・ゴイル)氏。核に鈍感になった社会に核の恐ろしさを喚起させようとする作品だ。卜氏は、文壇が北朝鮮と核について沈黙する現実を懸念する。一方、劇団「セシル」は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領を「歴史の勉強や、インターネットサイトでレスをつけることしか考えていない暇な大統領」と風刺した演劇「本当に、不条理だな」を来月上演する。冬眠していた風刺劇が動き始めているのをみると、現政権こそ「守旧勢力」になったという話もうなずける。洪賛植(ホン・チャンシク)論説委員 chansik@donga.com