
密度のある軽やかで澄んだ歌声と、極限のテクニックで世界中の声楽ファンを虜にしたソプラノのチョ・スミ氏。聴衆を圧倒する声量と、知的でゆったりとした表現で舞台を掌握するロシア出身のバリトンのドミトリー・フボロストフスキー。1962年生まれの同い年である2人のトップ歌手による夢の舞台がソウルで開かれる。30日午後7時半、世宗(セジョン)文化会館の大劇場で行われる「チョ・スミ&フボロストフスキーのデュオコンサート」。1990年代初め、ロンドン・ロイヤルオペラ劇場でおこなわれたベッリーニのオペラ『清教徒』で共演したことがきっかけで知り合った2人は、互いに相手をどう評価しているだろうか。公演を前に電話や電子メールで聞いてみた。
●チョ・スミ、「野性的なドミトリー、カッコいい」
チョ・スミ氏は今、ベッリーニのオペラ『夢遊病の女』の野外公演のため、ニューヨークに滞在している。「フボロストフスキーさんはですね…」と、電話の向こうから好奇心と期待感がにじみ出る声が聞こえた。
——2回の韓国公演で見たフボロストフスキーさんの印象は、「孤独な貴公子」でした。同僚の歌手の間ではどうですか。
「素敵な人ですね。じっくり話したことはありませんが、人柄も歌を聴いているときの感じと同じです。野性的で熱情的で、憂うつでありながら心の底から何かがこみ上げてきているような感じ…」
——美しく軽妙で知的な歌を聴かせてくれるチョ・スミさん、聴衆を圧倒するようなフボロストフスキーさん。いわば「美女と野獣」というコンセプトの公演になるのでは?
「(驚く)えー。2人とも欲張りですが、今回の公演では私が少し「女らしく」なる必要があります。相手がいかにも男らしいですから。そうすると舞台でいい効果が生み出せると思います」
●フボロストフスキー、「スミさんは生まれつきの女優」
ロシア全国ツアーリサイタル中に、電子メールで返事を送ってきたフボロストフスキー氏は、「スミさんは素晴らしい歌手で、素晴らしい女優だ」とほめたたえた。
——歌手としてのチョ・スミさんの長所は何だと思いますか。
「チョさんはオペラ歌手に求められる全てのことを持っています。ほかの歌手とはっきり違う魅力的な声や声楽のテクニックだけを話しているのではありません。舞台に立っている姿を見てはじめて彼女の真価がわかります。それは役柄に没入する優れた演技力のためです」
——人間的な魅力も感じられましたか。
「非常に熱情的で理解のある人です。オペラ歌手にはそうでない人が多いのに、彼女は人の話や歌を真剣に聞く耳を持っています。稽古の時も全力を尽くして演技する姿に深い印象を受けました」
●ロッシーニとヴェルディの二重唱歌曲を歌う
今回の公演で2人は、ロッシーニの『セビリアの理髪師』、ヴェルディの『リゴレット』などにある二重唱を歌う。その他にフボロストフスキー氏が歌うボロデンの『イーゴル公』のアリア、チョ・スミ氏が歌うマイヤベーアの『北極星』のアリアなど、2人が得意とする曲も幅広く紹介される。ショスタコーヴィッチによって「世界最高の室内楽団」とほめたたえられたモスクワ・チェンバー・オーケストラが伴奏する。5万〜20万ウォン。02—751—9607〜9
gustav@donga.com