高麗(コリョ)時代末期、文益漸(ムン・イクジョム)は中国の元から綿の種子を密かに持ち込んで拡散させたことから、後世に「木綿公」と呼ばれるようになった。綿は文益漸の努力で短期間に全国に広がり、農家経済と衣生活、生活文化の質を大幅に向上させた。農耕社会で新しい作物や品種は最高の産業秘密だった。文益漸は元の取り締まりを避けて、綿の種子を筆のさやに隠して持ち込んだ。韓国最初の産業スパイだったわけだ。
◆しかし現代だったら、文益漸が綿の種子を密かに持ち込んで栽培に成功したとしても、その種子を拡散させることはできなかったはずだ。米農務省は最近、遺伝子組み替え種会社と共同研究を行い、綿を栽培しても綿の果実だけをおさめられる品種を開発した。農夫が同品種を栽培して種子を採取しても、その種子は使い様がない。種子が成熟する頃、組み替えられた遺伝子が作動して、芽を出すのに必要なタンパク質合成を邪魔するからだ。結局、農家は遺伝子組み替え綿の種子を買い入れ続けて農業をするしかない。
◆先端技術製品の貿易量が増加していると共に、各国は先端技術育成と対外流出防止に渾身の力を傾けている。技術を開発して守ろうとする者と盗もうとする者の競争は熱戦を彷彿させる。1998年から今まで、先端技術流出を試みた段階で国家情報院に摘発された事例が51件にも及ぶという。今年だけで11件にのぼる。分野別には半導体、携帯電話、プラズマディスプレーパネル(PDP)など情報技術(IT)部門の主要技術が73%を占める。莫大な費用をかけて開発した新技術が競争国に流出すれば、経済はもちろん国家安保にも深刻な被害を与えるかも知れない。
◆最近では、莫大なスカウト費を提供するか、年俸を引き上げる方法で、研究開発職員を引き抜いて来る手法が多く使われる。先端企業らは研究開発人力に対して一程期間転職を禁止する誓約書をもらっているが、限界があるようだ。検察が最近、外国企業に移植して技術を引き抜こうとした半導体業者と製造装備業者の職員3人を摘発した。科学技術者たちは、技術流出と移植に関わる紛争の大半が、職場満足度が低いことに理由があると指摘する。技術売国を糾弾する前に、発明に対する補償と処遇を適切にしてこそ、技術流出は根本的に防げるということだ。
黄鎬澤(ファン・ホテク)論説委員hthwang@donga.com






