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[オピニオン]「失われた社会を探して」

Posted July. 25, 2004 22:07,   

一人の人間がおよそ20人を殺害した事件に大きなショックを受けた。もっとショッキングなことはそんな残酷な事件に対する韓国社会の反応が概して鈍いということだ。社会全般の雰囲気が極端な状況に追い込まれて戦いに明け暮れているものだから、本当に頭を悩まさなければならない社会問題は眼中にないのではないか、と心配された。一人の人間の怒りと敵愾心がこんなに深いのも大きな問題だし、そんな怒りと敵愾心を最も破壊的な方法でたやすく(?)表出したのもただごとではない。

◆ハンガリー出身の経済史学者カール・ポラーニは、「大転換」という著書で知性史に一線を引いた人である。同書でポラーニは19世紀にわたって市場経済が出現する過程を綿密に分析した。価格というメカニズムが作動する自己調節的な市場の出現という命題を立てたのだ。本当に重要なことはポラーニが市場経済の「理想的な体制」がもたらしうる社会的な結果に対する警鐘だった。その体制は必然的に人間の社会的な位置づけを残忍にも否定しながら、「悪魔のひき臼」のように社会を原子化した個人にしてしまうということだった。だからポラーニにとっては社会の発見と解体された社会の復元が主な関心事だった。

◆国際通貨基金(IMF)の監理体制の下、金大中(キム・デジュン)政府は新自由主義的な構造調整政策を強く進めた。その結果、中産階級の解体と社会の両極化を引き起こした。南米型社会への切替が起きた決定的なきっかけだった。社会は急速に解体への道を歩み、原子化された個人が急増した。その個人にモラル・ハザードを吹き込んだ政策を景気浮揚策だとして乱雑に進めた。生産的な福祉概念を導入して社会的な安全弁を設けようとしたが、社会解体の路線とモラル・ハザードという波は取り返しがつかなかった。

◆解体された社会、挫折した個人、自分の不幸を他人のせいにするモラル・ハザードの蔓延(まんえん)、社会復元が遅い国家、これが韓国社会の現実である。こんな社会では第2、第3の連続殺人犯ユ・ヨンチョルが出ないとは限らない。同じような考えを持った人たちがなくはないだろうという仮定が成立すれば、それこそ深刻な社会問題だ。「失われた10年」も取り戻さなければならないが、「失われた社会」も取り戻さなければならないのである。

李洙勳(イ・スフン)客員論説委員(慶南大学国際政治経済学教授)leesh@kyungnam.ac.kr

吳明哲(オ・ミョンチョル)論説委員 oscar@donga.com