高麗(コリョ)時代から始まって今日まで伝えられる山台(サンデ)仮面劇は、韓国の代表的な民俗遊戯だ。両班や破戒僧に対する嘲弄、庶民や妻妾の哀歓などを風刺的な台詞と踊りで描く山台仮面劇では登場人物がみんな仮面をかぶる。たとえば結婚年齢を過ぎてしまったチュバリ(チョンガー)の場合、赤い顔、黒い眉毛、大きい口の仮面で見物客らが劇中の役をすぐ見分けられるようになっている。このように仮面劇は演劇の根底と言われるほど歴史が長い。西洋文明のメッカである古代ギリシアでも、紀元前5世紀にソフォクレス、エウリピデス、アリストファネスのような傑出した劇作家らが活躍したが、出演者はみな仮面をかぶって舞台に上がった。
◆木やひさごなどを整えて作った仮面には、セリフ伝達のために口穴を空いておくのが一般的だ。劇中の登場人物を意味する「ペルソナ(persona)」は「通じて(per)」とか「音(sona)がする」という意味で、口穴が空いている仮面で来由した言葉だ。演技者が自分の役に徹して、はじめて自分なりの品格(personality)が認められる。例えばチュバリが上佐や墨僧のせりふや身振りを横取りしたら、仮面劇の場はめちゃめちゃになる。
◆今日、韓国社会の問題は何だろうか。家庭と社会で自分の仮面をかぶって自分の役割をまともに果たす人が減っているという点だ。大人がいなくなった家庭、リーダーとしての役割を果たさない政界、一生懸命働くより経営参加に関心の大きい労働界、学業より政治的な課外活動に関心を抱いている学生運動界などが、韓国社会が内部から崩れだしているという明白な兆しだ。龍川(ヨンチョン)駅爆発事故に見舞われた北朝鮮も、「カラーテレビ50台」要求にもすんなりと渡す韓国も、どちらも救護品を取り交わす正しい姿勢ではない。
◆数日後、憲法裁判所の弾劾判決が出るようだ。裁判官らがどのような結論を下すか知りたい。問題の発端は大統領の役割遂行に対する見解の違いにあった。いずれにせよ、判決後、大統領の第一反応が知りたくなる。まさにこの場面では意地を張りたい衝動を控えて、反対側も統合するリーダーらしい態度を見せるのが重要だ。こうしてこそ大統領も国も生き残る。チュバリが両班役ではないように、両班もチュバリではない。
金秉柱(キム・ビョンジュ)客員論説委員(西江大学名誉教授・経済学) pjkim@ccs.sogang.ac.kr






