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「母性を呼び覚ませ」

Posted February. 06, 2004 00:47,   

『母性革命』

サンドラ・スタイングレーバー著/金ジョンウン訳/414頁/1万2000ウォン/バダ出版社

米生態学者のサンドラ・スタイングレーバー(44)は1998年、38歳で初めての子どもを妊娠した。

同氏は、膀胱がんを克服し、中年で子どもを妊娠した妊婦として、普通の妊婦と同様に、喜びと不安と焦燥感を感じながら、無数な質問を思い浮かべた。

なぜ、つわりが起きるのだろうか?なぜ、奇形児が生まれるのだろうか?羊水検査は必ず受けるべきだろうか?子どものために何を選んで食べなければならないのだろうか。母乳を必ず飲ませるべきだろうか。

同氏は、妊娠期間の間、終始図書館を訪ね、発生学関連の書籍や奇形に関する論文をさがしたり、環境生態の報告書を読んだりしながら、妊娠と出産に関する疑問を一つずつ解決していく。そして、有名なインディアン産婆のキャシー・クックの話を思い浮かべる。「母親の体は、赤ん坊の初めての環境だ」。世の中が汚染されれば母親が汚染され、母親が汚染されれば赤ん坊も病気になる。同書は、ある女性生態学者の「母性保護」に関する報告書だ。

赤ん坊の健康と母親の体、地球環境との関係を探求し、記録した。その結果として出てきた妊娠・出産・授乳に関する多くの情報も盛っている。

▲妊娠、胎児を脅かすもの〓先天性の奇形は、米国で乳児の死亡原因の第1位になっている。その原因は、遺伝よりは環境的要因がもっと大きい。水銀は、胎児の脳を破壊するが、水銀が主に吸収されるルートは、魚と海産物の摂取だ。1986年、デンマークの研究結果によると、海産物をたくさん摂取した母親であるほど、髪の毛から検出された水銀の濃度が高かった。

その母親らが産んだ7歳の子女への評価を行ったところ、母親の髪の毛から検出された水銀の濃度が高いほど、子どもの記憶力や学習能力も落ちた。また、出生前に、水銀にさらされた場合は、出生した後、幼年期にさらされた場合より、さらに致命的な影響を受けることが分かった。

米国の環境研究協会は、妊婦らに、缶詰のツナを1カ月1回以上食べるなと警告している。問題は、米国で作られる3000種類の大量な生産化合物の中で、4分の3以上が、胎児と子どもの生体発達に及ぼす効果が確認されずにいるということ。

たとえ、危害性が立証付けられるとしても、業界の抵抗に押されて、使用禁止の決定が下されるまでは、数多くの子どもらが犠牲にならなければならない。1925年、国際協約を通じて、胎児の脳を破壊させる鉛、ペイントの家庭での使用が全世界で禁止された。しかし、米国は、業界のロビー活動に押されて、70年代後半になるまで、鉛、ペイントの生産を中止しなかった。

▲出産、母乳のジレンマ〓著者は、出産の鎮痛は、疾病の痛みとは異なった意味を持つと考えており、産痛を減らしてくれる痲酔剤なしに「聖堂を満たすパイプオルガンの音のような」痛みのすえ、娘を産んだ。医師に強く勧められ、やむを得ず、会陰を切開せざるを得なかったが「出産から2年が過ぎた今でも、依然として尿失禁と鈍くなった性感で悩んでいる」とし、決してするなと助言している。

出産の苦痛を勝ち抜いた産婦らには「母乳のジレンマ」が待っている。母乳が赤ん坊に良い理由は、100個を越える。生後1年間にわたって母乳を飲ませ、各種の疾病にかかる確率を減少させることだけでも、赤ん坊1人当たり年平均331〜475ドル(約4万〜6万円)の医療費が節減される。

また、母乳を飲ませた母親らの場合、子宮ガン、そして閉経前に乳がんが発生する比率が低い。問題は、人の母乳には、牛乳より10〜20倍も高い濃度の、有機塩素系の汚染物が入っているとの点だ。96年、ある研究者は「母乳を粉ミルクのように管理したら、母乳の場合、毒性物質の含有量が高く、決して市販できないだろう」と主張した。

粉ミルクと母乳のうち、どちらを選ぶべきだろうか。安心して授乳できる環境を作れば、ジレンマは解決される。最も先にすべきことは、食物連鎖の最後の段階に、赤ん坊を描き入れることだ。

難分解性の毒性化合物は、食物連鎖を、一段階あげるたびに、10〜100倍も濃縮される。汚染された環境の最大の被害者は、母親ではなく、それより10倍、100倍のダメージを受ける母乳を飲む子どもらなのだ。原題は『Having Faith』(01年)。



李珍暎 ecolee@donga.com