韓国—チリ自由貿易協定(FTA)の国会批准、コメ市場開放の再交渉など、重要な通商懸案が山積している中、現実に対する「歪曲と回避」が通商交渉の足を引っ張っているという指摘が出されている。
とりわけ、9日に迫った国会FTA批准同意案の処理が、もし今回も失敗に終わった場合、韓国の対外信頼度と競争力が大きく低下するものと憂慮される。
5日、政府当局と通商専門家らによると、通商懸案と関連して政界の一部と利益団体が現実をありのまま認めず、斜にかまえてひねくれた受け止め方をしているため、国家的な負担となっているという。
政府のある高官は、コメ市場の開放と関連し「ウルグワイラウンド(UR)協定によると、韓国がコメ市場の開放を引き続き見合わせるためには、すべての貿易相手国に納得してもらえるようなレベルで、工業生産品分野まで含んだ補償措置をとらなければならない。これが果たして可能なことなのか」と問い返した。
現実として開放以外に代案はないが、政界と一部の団体が農民に間違った希望を植え付けているという説明だ。
また、一部の国会議員と市民団体は韓国—チリのFTAと関連しても「チリは、世界3位の農業大国であり、FTAの締結によって韓国の農業が崩壊する」と主張してきた。
これに対して、外交通商部(外交部)の金炳燮(キム・ビョンソプ)の多国通商課長は「チリ輸出の62.2%を占めるリンゴと梨、葡萄は、韓国—チリFTAの例外品目であり、チリの農産物の輸出は世界14位だ」と反論した。
FTA締結の遅れによる輸出の被害も大きくなってきている。
産業資源部(産資部)が5日発表した報告書では、今年発効される主要国間のFTAにより、韓国は年間3億ドル、輸出に支障をきたすだろうと展望した。
産資部の李承勳(イ・スンフン)貿易政策審議官は「FTA締結国同士の『恩恵貿易』が増えることは、韓国の輸出競争力に大きな負担となってきている。日本—メキシコ、インドータイなど、現在進められているFTAが新たに発効されれば、韓国は年間最大6億ドルの輸出被害を受けるのは必至だ」と述べた。
外交部は「チリ上院が、先月韓国—チリFTA批准同位案を処理したのは、韓国でもFTA批准がすぐ処理できるという韓国政府の説明を信頼したからだ。もし、9日にも国会批准が流産すれば、深刻な後遺症が残る見通しだ」と述べた。
通商問題に関して、政府省庁間意見調整システムの不在が問題だと指摘する声もある。通商交渉専門家のA教授は「ある省庁の次官や次官補が主催した会議に、他の省庁の事務官が局長に代わって出席した場合もある。省庁間の葛藤を調整するシステムがない」と指摘した。
李恩雨 libra@donga.com






