
「アーチェリーの女王」のユン・ミジン(20、キョンヒ大学)に会った17日のソウルの体感温度は零下10度まで下がっていた。その上、泰陵(テ・ヌン)選手村では同日明け方に雪まで降った。そのためだろうか、選手村のアーチェリー練習場は真冬の雰囲気に完全に包まれていた。風まで吹き荒れて、体が縮こまるほどだった。
アーチェリー選手の訓練は冬にも続けられる。仮設の建物の中に窓を作って、その窓の間から外に向けて弓を引くのだ。
暖炉の傍で弓を引いていたユン・ミジンは写真撮影のために外に出ると、不満気にぼやいた。「ううっ寒い。風邪引いたら責任取ってくださいね」。ユンは「インタビューはそれほど嬉しくありません。練習時間をとられるから」と率直に語った。
2000年シドニー五輪の時から取材してきた記者とは縁が深い。それでも率直に自分の意見を述べるユン・ミジンは憎めないところがあった。むしろすまなく思った。他の人なら休んでいる週末や真夜中に練習場に出て一人で訓練するほど、熱心な「練習の虫」だということをよく知っているからだ。
来年はアテネ五輪が開かれる。ユン・ミジンは五輪のアーチェリー史上初の記録に挑戦しようとしている。2回連続の五輪2冠王。世界最強の韓国アーチェリーだが、いまだに誰もこの記録を達成できていない。「元祖」アーチェリー女王のキム・ジンホ(韓国体育大学教授)も、「神弓」のキム・スニョン(醴泉郡庁)も2回連続五輪に出場して個人・団体2冠王は果たせなかった。
2000年シドニー五輪の2冠王と今年ニューヨーク世界選手権大会2冠王として世界最高の女子弓士として君臨しているユン・ミジンは、来年のアテネ五輪でも当然金メダル優先順位の候補に挙がっている。ユンもまた、「選手生活で達成できることはほとんど達成できただけに、2冠王2連覇が残された最後の目標だ」と野心を隠さなかった。
「だからと言って、今から負担を感じたりはしません。普段、『私はできる。やれる』というふうなマインド・コントロールはしてません。毎瞬間、前に置かれたことに一生懸命やっているといつの間にか自分の手に目的していたものが入っていました。来年の五輪も同じです」。
五輪2冠王をめざすユン・ミジンの足止めは「外」ではなく「中」にある。まず、五輪の金メダルよりも難しいとされる国内代表選抜大会を通過しなければならない。
「シドニー五輪で金メダルを取った翌年国家代表から外れました。気を抜いたんですね。とても悔しかったです。気を引き締めて一生懸命やって02年にもう一度太極マークをつけたんですけど、その時感じました。もう皆さんもご存知でしょうが、怠けている選手にはチャンスがないということです」
多くの人がユン・ミジンを「生まれながらの選手」だというが、実際彼女は「作られた選手」に近い。自らも「ここまで来るのに努力がより多く働いた」と語っている。
「生まれながらの部分はですね。うん…・別にないけど…。視力(1.5)がよくて弓を引くのに体の骨格が適していることぐらいかな。でも、背も高くなければ(167cm)筋力も弱くて38パウンド(弓の強度、強さを言う)の弓を使っています」
ソ・オソク(46、全北道庁)女子代表チームの監督に、「ユン・ミジンが他の選手と区別できる長所はなんですか」と聞いた。ソ監督はユン・ミジンが個人・団体2冠王を勝ち取った2000年シドニー五輪と今年のニューヨーク世界選手権大会の司令塔。
ソ監督は三つ挙げた。「まず、状況判断が早い。その時その時の危機をよく脱し、状況対処能力が優れているということ。第二に、キム・スニョンのように大胆で根性がある。勝負欲が並ならないということでしょう。走るにしても常にがんばって1番に入ります。最後に同僚や先輩・後輩との関係がいいということ。幼いながらも人に分け与える性格だから、皆から好かれています」という。
弓も上手で性格もいいから錦上添花(錦に花を添える)という話。だが、アーチェリー選手として100点に近いユン・ミジンも「ロボット」のように完璧ではない。他の人たちみたいに緊張もすれば胸もどきどきするという。
「ラインに立った時が一番あがります。以前は矢を落として0点になったこともあります。アテネ五輪ではアーチェリースタジアムが古代のオリンピック競技場のようじゃないですか。視線も多いだろうし。だからもっとあがると思います」
ユン・ミジンは二十歳の女子大生のようにカラオケとナイト・クラブに行くのも好きだ。昨年トルコのヨーロッパグランプリ大会が終わった後、ナイト・クラブで打ち上げパーティーを行った時は一晩中外国の選手と踊りながら遊んだとか。大学生になった後一度もコンパに参加できなかったのは残念だが、まだ男には興味がないという。
選手生活を終えた後の夢はなんだろうか。
「オ・キョムン(元男子国家代表)先輩から『運動もいいが、勉強をしてみたらまったく違う新世界だといわれた。知れば知るほど面白いからお前たちも勉強しろ』という言葉をききました。大学院も卒業したいし、ともかくたくさん勉強したいです」
インタビューが終わった後、「今日は練習する時間がなくなったから後で練習時間をとる」と言う。笑顔の中からこうもしっかりした性格を読み取れた。
金相洙 ssoo@donga.com






