
映画「情事(Intimacy)」に描かれたセックスは違う。極めて日常的だ。セックスを待つ男の爪には中年の退屈な日常を象徴するかのように黒い垢までみられる。男を訪ねてきた女は、ドアを入るやいなやトイレに駆け込んで用を済ませ、水を流す。
セックスだけをして素性も明かさず言葉も交わさない約束をした関係に、愛の感情が芽生えて複雑微妙な感情に陥る男女関係を描き出した映画はかなりある。「ナイン・ハーフ」、「ポルノグラフィックな関係」、「Better Than Sex」などなど。しかし、この映画に登場する中年男女のセックスは露骨だが「派手」ではない。コンドームをつけたり、オーラルセックスをしたりするシーンが、そのまま描かれてもそうである(国内封切り映画ではこうしたシーンはぼかしが入る)。
バーテンダーで一人で暮らしの離婚歴のある男ジェイ(マーク・ライアンス)には、水曜日の午後訪ねてくる女(ケリー・フォックス)がいる。匿名という闇の中で、二人はいつも会うやいなや激しいセックスをして別れる。女に対する好奇心から、ジェイはある日、帰る女の後を追いつけてその正体を知る。女はクレアという名前を持つ無名演劇俳優であると同時に、家庭的な主人と子供一人を持った平凡な主婦。ジェイはクレアの夫に近付いて、女性問題を問い詰める。これを知ったクレアは混乱に陷る。
この映画が説得力を持つ理由は、男女がお互いの魅力よりは自分の欲望に忠実だからだ。二人はセックスを吟味しない。そこには喜びもテクニックもない。セックス時間は30秒を超えない。女性の腹部の肉はたるみ、肌はつやがないうえに胸は垂れている。しかし、暮らしが退屈であるだけに、セックスは切実だ。
「人は毎日まったく同じものを飲むけど、いつも何を飲むかを聞いてくれる方が好きなの」ジェイの言葉とおり、二人の男女は「暮らしはいつも同じだが、それでも違う」と考えたいのかもしれない。夫にばれた後も、むしろ暮らしの疲れを夫にこぼすクレアの思いがけない姿は、バンド「ティンダースティックス(Tindersticks)」の世紀末的で無気力なテーマ音楽といっしょに、この映画が「不倫の日常」を徹底的に掘り下げていることを見せてくれる。
2001年ベルリン映画祭作品賞(金熊賞)、主演女優賞(銀熊賞)など3部門の受賞作。封切りは31日。映画観覧は18歳以上。
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