
午後3時53分。乗客110人を乗せた北朝鮮高麗(コリョ)航空のロシア製旅客機が、順安(スンアン)飛行場の係留場を離れ、ゆっくりと滑走路に向かって移動を始めた。白頭山天池(ペクトゥサン・チョンジ、白頭山の頂上にあるカルデラ湖)の下にある三池淵郡(サンジヨングン、両江道)に行く高麗航空JS5377編特別機だ。航路上の距離は500km、所要時間は離陸後50分。
白頭高原(蓋馬高原を北朝鮮ではこう呼ぶ)の三池淵飛行場に着陸した。登山用時計の高度計は「1500m」(正確な数値ではない)を指した。太白山(テベクサン)頂上(1547m)の高さ。話に聞いていた「白頭高原」を実感させた。
2日目の早朝。バスに乗って白頭山天池に向かった。三池淵邑から46km。海抜1950mのツリーライン(Tree Line、樹木生長限界線)を過ぎると、熔岩台地のはげ山の尾根が広がった。ここから天地までは14km。白頭橋(2120m)で小白水(ソベクス)を渡ると、険しい山道が続く。警備歩哨所を過ぎ「三池淵42km白頭密営(ミルヨン)38km」と書かれた道しるべを過ぎて鋪装されていない道に出ると、霧が濃くなった。天池は近い。
駐車場には「地上軌道式索道」(89年に竣工した地上ケーブルカー)「白頭駅」がある。天池のヒャンド峰まで運行する。天地の13の連峰のうち3番目に高いというヒャンド峰(2712m)。軍服を着た女性ガイド5人が温かく迎えてくれた。眼下に広がる天地。巨大なカルデラの護岸は白い雪で覆われた。天池では9月に雪が1mも積もった。
天池の外を見てみよう。「千里樹海」の木の海が空と触れ合う所まで広がった。その大地の果て、地平線に明るい光が現れた。日の出だ。黎明が消えて白頭高原の雄姿が現われた。天池の連峰もひとつふたつ朝の日差しで赤く染まった。清らかな湖の水も彩られた。
天池の水面の高度は2199.6m。ヒャンド峰(ヒャンド駅2600m)からゴンドラ(長さ1200m)に乗って天池に下りた。中国側から眺めるだけだった天地。両手ですくって飲んでみた。
5日間の白頭山旅行。路程は白頭高原の周辺がすべてだ。道は主に日本が1930年代に国境守備のために建設した甲巫警備道路(甲山〜巫山)を利用した。白頭高原を旅行した4日間。わくわくする気持ちを抑えることはできなかった。
平均高度1400mの高地である白頭高原。その上を覆う原始林から成る千里樹海は、バスが2時間走っても、高さ30m級の木がびっしりと生い茂った中を抜けることができない巨大な森の海だ。10月中旬でも雪が2m50cmも積もり、5月中旬まで雪が残るという三池淵白頭高原の大自然。鹿が森の中を歩き、虎がまだいると皆が信じる巨大な白頭山。その眼下に広がる白頭高原のこの壮大な大自然は誰もが感嘆せずにはいられない。
summer@donga.com






