アブラハム・リンカーンのニックネームは「正直なアブ」だった。彼は24歳の時、店を運営していたが、同業者のせいで巨額の借金を持つようになった。当時の法律では、そういう場合、破産を宣言して他の地域へ移住したら債務から逃れられたそうだが、リンカーンは約束を守るために、一生懸命お金を貯めて結局負債を全て返済した。彼の正直さが分かるエピソードだ。また、リンカーンは田舍の郵便局長として勤めたこともある。リンカーンが勤めていた郵便局が閉鎖されて、数年後に政府が郵便料金などの未収金を回収するために人を送った。リンカーンは古い箱の中から靴下を取り出したが、その中には数多くの小銭が入っていた。数えてみたら、なんと金額がぴったりだったという。
◆リンカーンが米史上、最も偉大な大統領として愛されているのは、南北戦争の勝利や奴隷解放のような業績を残したことにもよるが、彼の正直な人格のためでもある。約束を守り正直に生きるのは大事な美徳だが、リンカーンのようにこれを一生実践するのは難しいことであるため、人間の正直さに係わる話は胸を打つのであろう。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が慶南鎭海(キョンナム・チネ)のある中学校を訪問した。2年前にこの学校を訪れた時、「大統領になったらまた訪ねて来る」と約束したことを守るためだ。学生たちには「約束を守る大統領」を間近に見られたことは良い記憶として残るだろう。
◆盧大統領がこの学校で、「米のリンカーンみたいな大統領になりたい」という抱負を語り、彼の「モデル」がリンカーンであることを再確認させてくれた。彼の尊敬する人物がリンカーンだということはすでに知られており、「盧武鉉が会ったリンカーン」という本まで執筆したことがある。彼が普段原則を強調するのは、リンカーンの政治哲学とも一致する。出身や職業などさまざまな面で2人は共通点が多い。本の題目とは反対に、もしリンカーンが盧大統領に会ったらどんな忠告を聞かせてくれるのだろうか。
◆大統領という職は数多くの約束をせざるをえない。彼もすでに候補時代に多くの約束をしたはずだ。今も会う人ごとにあらゆる希望事項を並べるはずで、その中には約束をしなければならない場合も当然あるだろう。約束したことは必ず守らなければならない。しかし、守ることができない状況になったらどうすればいいのか。やはり率直に打ち明けるしかない。リンカーンが盧大統領に何かアドバイスをするとしたら、何よりもまず正直ではないだろうか。中学生たちとした2年前の約束を守ったように、盧大統領が任期を終える5年後、国民の前でも「約束を守った大統領」「正直な大統領」の姿であってほしい。それだけでも彼は「歴史の勝利者」になれるだろう。
洪賛植(ホン・チャンシク)論説委員
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