米国アラスカ州南部にプリンス・ウィリアム・サウンドという海峽がある。1778年、イギリス人船長のバンクーバーが、当時国王であったジョージ3世の王子の名前をとって名づけた所だ。海峽の水域と周辺は州立公園で、高い山、氷河、フィヨルド、洞くつや小さな島々が散在し、美しい自然を誇っている。グリズリーや、ハゲワシ、クジラ、カワウソ、アザラシ、各種の海鳥がせい息する世界的な生態系の宝庫である。静かな海はボートを楽しむのに最高の場所に数えられ、近隣のバルデス港などを起点とするクルーズ観光の名所でもある。
◆天国のように未開の美しさを保つここに、1989年3月24日、災難が襲った。アラスカ原油22万トンを積んでバルデス港を出発した米国のタンカー、エクソン・バルデス号が暗礁で破損し、4万1300トンの油が海に流出した。海岸線1600キロが汚染し、25万羽の海鳥、2800頭のカワウソ、300頭のアザラシ、250羽のハゲワシ、そして数多くの魚が死んだ。エクソン社は、清掃費用だけで21億ドル(約2兆5000億ウォン)を使うことになった。米国の史上最悪の環境汚染事故である「エクソン・バルデス号事故」は、その後これまでタンカーによる海洋汚染事故の代名詞となっている。
◆大西洋のスペイン近海で7万7000トンの重油を積んでシンガポールに向かっていたバハマ船籍のタンカー、プレスティージュ号が嵐でまっぷたつに折れ、19日に沈没した。この過程で1万トンの油が流出した。半径数百キロの海が油に覆われ、魚や鳥が被害を受けている。船が沈んだ海は水深3.5キロもあり、船の中の油を抜いて引き上げるのは不可能であり、燃料用重油は毒性が原油よりも強く、浄化作業も困難であると専門家は言う。残っている6万トンの重油が深海から流出した場合、環境生態系に与える影響ははかり知れない。エクソン・バルデス号事故をしのぐ海洋汚染事故になるか、世界が注目している。
◆エクソン・バンデス号事故が起きた翌年、国際海事機構は、積載トン数600トン以上のすべてのタンカーは、二重船体またはそれ以上の構造を備えるよう義務づける国際協約を採択した。問題は、すでにあるタンカーは、2007年までは使えるようになっているという点だ。プレスティージュ号は、76年に造られた単一船体のタンカーである。全世界の海を航海する1万トン以上のタンカーの52%がこのような単一船体のタンカーであるというから、韓国の近海でも、いつどこのタンカーがプレスティージュ号になるか、気が気でない。
文明豪(ムン・ミョンホ)論説委員 munmh97@donga.com






