イギリスのスコットランド地方を初めて訪れた人は、ウィスキーと同じブラウン色の水が流れている小川を見て驚く。いくらウィスキーの本場とは言え、小川の水までウィスキーと同じ色であるとは!水の色の秘密はピットと呼ばれる泥炭だ。スコットランド地方の至るところに濃いブラウン色の泥炭があって、その上を流れる小川は自然にウィスキーの色を帯びることになるのだ。泥炭はディスティラリー(Distillery)と呼ばれるウィスキー釀造場で、麦を麦芽にして醗酵させる過程で燃料として使われる。ウィスキーの色は他ならぬ麦に染み込んだ泥炭の煙のブラウン色だ。
◆すべてのお酒がそうであるように、ウィスキーもやはり水の良い地域で名品が出る。鹿の頭の商標と三角形のびんで有名なモルト・ウィスキー、グレンフィディックの歴史は、水に関わる伝説から始まる。グレンフィディックの創業者が、大きな鹿が谷を長時間さまよったあげく泉を見つけて美味しく水を飲む夢を見た。夢から覚めた彼は記憶をたどって谷を探しに行ってみたら、実際に水の味がとてもすばらしい泉があった。彼がその水で作り始めたウィスキーがグレンフィディックということだ。グレンフィディックは「鹿の谷」という意味だから、ウィスキー名家の伝説ではあるが、本当にわけのわかる話である。
◆イギリス人たちがウィスキーにつぎ込む愛情にはきりがない。ウィスキー原液をオークの樽に入れて、最小限6年以上熟成してからこそ販売できるし、またその値段も相当なものだ。イギリス人たちは長い熟成の過程で、オーク樽の隙間から抜けて空中に飛んで行く、すなわち氣化するウィスキーを「天使の髪の毛(Angel’s hair)」と呼びながら惜しむという。フランスのコニャック地方でも、熟成期間中に消えてしまうコニャックをやはり天使の髪の毛と呼んでいるそうだ。消えていく大事なものに対する切なさには国境がないようだ。
◆そんなに大事なウィスキーを、なぜか韓国人はがぶがぶ飲む。今年は10月末までに、韓国内で5270万本(500ml)のウィスキーが売れたそうだ。高級ウィスキー市場ではバレンタイン17年物の場合、生産高の40%が韓国の酔っ払いたちに飲まれてしまうぐらい狂風が吹いている。タイムズ紙は最新号で、韓国が昨年、2億5600万ドル分のスコッチ・ウィスキーを輸入し、前年対比20%の伸び率を見せたとして、韓国がウィスキー業界の新しい希望として浮かび上がっていると報じたぐらいだから、その狂風はさぞかし強かったのだろう。
「韓国がウィスキーに酔っている」と言っても過言ではない。ひょっとしたら、それで大統領選挙が20日あまりしか残ってないのに、未だに候補を確定できず右往左往する情けない状況になってしまったのではないのだろうか。ウィスキーの年輪を数えながらゆっくり味と香りと吟味する人たちに会いたい。
方炯南(バン・ヒョンナム)論説委員 hnbhang@donga.com






