南北首脳会談に次いで、大統領が、もはや韓半島に戦争の危険はないと国民の前で宣言してから日が浅いのに、今またその大統領の政権で、危機をうんぬんして特使を派遣するというから、国民は戸惑うしかない。一体、この政権の安保基準は何なのか。
特使派遺の発表も、ちょうど特検(特別検察)が捜査終了報告をする日を選んで、大統領の親戚による不正やアジア太平洋平和財団の問題への関心を弱めようとしたとみられる。選挙やサッカー・ワールドカップ(W杯)などのさまざまな大事を前に、再び太陽政策を持ち出して局面転換を図ろうとする意図もなくはないだろう。
これまで、金剛山(クムガンサン)観光につぎ込んだ4億ドルが、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の軍事用に転用されていたという事実を米国が韓国政府にメモで伝えたにもかかわらず、政府はまたも金剛山観光を税金で支援してまで続けるという。その政策の合理性は到底理解できない。もしこのような行為が個人によって行なわれたなら、当然のごとく反逆罪に当たる重大事に違いない。しかし、外交権をもつ政府がすることなので百歩譲るとしても、これまでしてきたことは、カモフラージュされた平和をカネで買ったに過ぎない。何のためにこんなことをするのかという単なる感傷論は言わずとも、どうも大統領個人の何らかの理由があるのではないかという疑念を抱かずにはいられない。
これまで、太陽政策は平和に向けた政策であるというものの、韓半島における平和は現在的であり、直接的な軍事レベルの危険を除いては、いかなる協力や交流も副次的な意味以上をもつことは難しい。そのような事情を覆い隠して、緊張解消の成果としてこれまでの業績を政府が大々的に宣伝することは、韓半島の戦争条件が何であるかを十分に理解していない多くの世代に多大な錯覚を抱かせ、内的な力の弱体化のみをもたらしている。
実際にこのような懸念を禁じえないのが、最近一角で起こっている反米運動である。政府がこれまで太陽政策というゆう和政策を取ることができたのも、米軍の強力な抑止力を背景に可能であったのだ。しかし、この抑止力を弱めようとする北朝鮮の粘り強い戦略に、近頃は政府までもこっそりと後押しするような印象を受けずにはいられない。
北朝鮮の体面を立てることを米国に懇願してきたことも、これと無関係ではない。そして、韓国のW杯と北朝鮮のアリラン祝典を利用して、すでに時間かせぎに出た北朝鮮の立場を補強する方向に政府が進むものと見当がつく。世界的な祝典に韓半島問題を引き入れて、出口のない窮地にある北朝鮮の運命に退路を開く戦略を駆使しようとするならば、それこそより大きな不幸を育てることになる。このことを国民は認識しなければならない。
政府も、しっかりした状況認識を持つべきである。日本も、自国民の拉致問題が解決しないかぎり、北朝鮮との国交を正常化することは不可能であるとしている。なかでも米国が、核ミサイルと通常兵力問題はもとより、人権とテロ問題を加えて、過去のような事案別の折ちゅうではない、一括妥結方式を主張していることは、その意志の強さがいかほどかを示している。政府は、核とミサイル問題を他と分離してアプローチする考えであるようだが、すでに北朝鮮問題を世界的安保のレベルでみている米国としては、容易に納得できないことは明らかだ。
また時間的に見ても、中国のオリンピックが始まるまでに、北朝鮮問題を本質的に解決しなければならない状況である。米国のこのような政策方針は、韓国が独自で十分な抑止力をもっていたなら、自らすでに採択しなければならない方向であった。
もはやボールは北朝鮮側に渡った。代価を要求するやり方や瀬戸際戦略も通じがたい状況になった以上、北朝鮮も、世界の諸事情が革命的に変化したことに背を向けず、体制変化の要求を受け入れてもらいたい。それだけが、民族が発展できる道なのだ。
一方、韓国政府も、これ以上自己陶酔的な幻想を追わずに、正道を進むことを切に願う。生はんかに浅知恵を働かせて、多大な困難を招かないかと心配だ。すでに北朝鮮という要素を韓国の内部政治の構造的要素にまで引き込んで位置付けた現政権は、政治ゲームのカードを握っていると満足に思うかもしれない。
しかし、これを使って政権継続を図るという疑念を国民の多くが感じているという世論調査結果を見ても、空虚に膨れ上がる家計の負債のように、政府の太陽バブルも取り払う時がきた。
盧在鳳(ノ・ジェボン)元首相






