
ゾマーさんのこと
パトリック・ジュースキント著
122ページ、6500ウォン、ヨルリンチェクトル
「お願いだから私を放っておいて」
小説「ゾマーさんのこと」に出てくるゾマーさんの独白は、未だに多くの人々の胸に迫るセリフとして、心に刻まれている。
「ゾマーさん…」は、92年11月に第1版が発刊され48刷まで、99年に新版が10刷まで出るなど、合せて80万部の売行きをみせた本。最近も、出版社の説明では、1ヵ月に平均3000〜4000部程度の注文が入っているという。
この本は、短い「童話のような」小説だが、老弱男女誰にも受け入れられる内容である。ジャン・ジャック・サンペの挿画も、ほのぼのとした感じを与えている。
世間を恐れるゾマーさんは、不思議な杖を持ち、何かに追われている人のように、この村からあの村へと果てしなく歩き回る。一人の少年の目に映ったその姿は、極めて奇異なものだった。ゾマーさんは、機械文明に抑圧された人間の「純粋」を意味する。自らを「放して」という絶叫は、さつばつとした現実に傷ついた純粋な魂のもがきのように見える。
主婦のムン・ヒョンジャ(58)さんは「ゾマーさん…」を読んで、時間と仕事に追われる自分自身を、振り返るきっかけになった」として「忙しい毎日の中で、たまには幼いころの童心に帰るのも良いと思う」と、感想を語ってくれた。
「ヨルリンチェクトル社」が、「ゾマーさん…」の海外版権契約を結んだ92年当時の、短いエピソードを紹介しよう。このニュースを聞いて「すでに翻訳してあるから、私のにしてくれ」と、翻訳者たちが押し寄せてきた。訳者たちも「ゾマーさん…」は「大当たり」すると見抜いていたのだ。
しかしこの本は、第1版が発売された当時、これといった反応がなかったが、3年後にベストセラーに急浮上した。「ヨルリンチェクトル」の関係者は「初めは、読者たちもなじみ難かったのか、さほど反応がなかったが、口コミで知れ渡り、いきなり注文が殺到してきた」と語った。
小説の中のゾマーさんは、死を迎えることになるが「じっくりと生の余裕を探すべし」という教訓は、後々まで残っていそうな気がする。
beetlez@donga.com






