保険会社勤務歴15年。そのうち、所長のキャリアだけでも7年の金(キム)さん(42・女)。彼女は、昨年、某生命保険会社の所長募集公告を見て履歴書を出したが、落ちてしまった。彼女が、電話で落ちた理由を聞くと、会社の関係者は「履歴やキャリアは申し分ないが、女性の所長は採らないし、これからも採用しない方針」だと答えが返ってきた。
昨年、某製紙工場に入社した女性社員の南(ナム)さん(28)は、新入社員の研修に参加してびっくりした。新入社員6人の内、男性2人のみ正社員で、自分を含む女性4人は皆1年の契約職だったのだ。彼女は、この会社が通貨危機以降、引き続き同じ方法で新入社員を採用していたことも分かった。
▲法律は先進国レベル〓韓国女性開発院によると、1948年以降現在まで女性の権利と関連して立法、または改定された法案は287種にのぼる。特に、80年代に男女雇用平等法と家族法など49種が、90年代には性暴力特別法と家庭暴力特別法、女性発展基本法など173種が立法または改定され、「法に則って」いれば、21世紀は男女平等の時代に間違いないように思えた。
しかし、これらの法律と制度は、現実ではあまり実効性がない。社会的な関心が高くないばかりか、当事者である女性さえもよく知らない場合が多いからだ。現在、憲法には、全ての領域における性差別の禁止、婚姻と家族生活における個人の尊厳性と男女平等の保証、国家の母性保護努力などが明示されている。男女雇用平等法は、募集、採用、教育、配置、昇進、定年、解雇、退職における女性の差別の禁止、女性の外見を採用基準とすることなどを禁じている。また、男女差別禁止及び救済に関する法律も、雇用と教育、法律と政策の執行における男女差別とセクハラを禁じている。
▲法律とは程遠い現実〓しかし、法規と現実はかけ離れている。韓国女性労働者協議会の王仁順(ワン・インスン)政策委員長は、「企業が募集公告から『男性のみ採用』と明示したり、願書を受付ける段階で女性の願書は受付けない例も少なくない」と語った。王委員長はまた、△同じ職種で男女の定年に差を設けたり△女性が多い職種の定年を他の職種より下げたり△結婚・妊娠・出産のような理由で女性を解雇したり△社内夫婦または共働きの夫婦に対する解雇を直接・間接的に強制する事例もあると指摘した後、これは全て現行法違反だと強調した。
韓国女性民友会が昨年、就業公告をモニタリングした結果、599件の違反事項の内、応募資格を男性に制限した例が95件(22%)、職種・職級を分離したものが54件(12%)、秘書・販売・事務・経理職など女性のみの求人が187件(44%)などの集計が出た。
鄭良姫(チョン・ヤンヒ)ソウル女性労働組合委員長は「職場内の性差別は男女雇用平等法施行以降、非正規職などの雇用形態を媒介にした性差別に変わっている」と述べた。
統計庁によると、女性のうち非正規職労働者の割合は、97年62%から昨年には69.7%に増え、非正規職全体における女性の割合も50%を超えた。
▲「女性の権限」後進国〓国連開発計画(UNDP)の「2000年人間開発報告書」によると、議会の女性比率、行政管理職の女性比率、専門技術職の女性比率などで算定される女性の権限を計る尺度で、韓国は世界70ヵ国のうち63位だった。
しかし、職場の中の配置や昇進における性差別を発見すること自体が容易ではない。韓国女性開発院が昨年、売上高基準で100大企業を対象に調べた結果、女性に対する社内の昇進方針と実際の状況は全く違っていることが分かった。規定上、調査対象企業の89%が「男性と同じように昇進可能」、10%は「一定の職級まで昇進可能」、1%のみが「昇進対象から女性を除外」となっているが、実際は女性管理職が2%未満の企業が78%、2〜85%の企業が2%、85%以上は10%に過ぎなかった。
▲職場内のセクハラ問題〓95年、女性発展基本法がセクハラの予防規定を設けて以来、職場内のセクハラと関連した法規は継続して進展してきた。99年改定された男女雇用平等法と、99年に制定された男女差別禁止及び救済に関する法律は、セクハラの禁止とセクハラ予防教育の実施などを規定している。
しかし、現場は法律より後れを取っている。性暴力相談所の崔英愛(チェ・ヨンエ)所長は「現場で予防教育をすると『そんなこともセクハラなんですか』という質問を受ける」とし、「これは、男性のみならず女性においても同じ」と語った。女性部の李相悳(イ・サンドク)差別改善局長は「セクハラ問題が現場で解決されるためには、より多くの教育と広報が必要」と述べた。
徐永娥 sya@donga.com






