
北京の国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に駆け込み、29日に第三国のシンガポールに出国したチャン・ギルス君(17)一行の問題は、金大中(キム・デジュン)大統領政府が推進してきた「太陽政策」に隠れた影の面を思い起こさせてくれた。
政府は、96年、脱北者が増えると北京駐在のUNHCRに資金などを支援し、北京郊外に脱北者受入施設を建てる方法を検討した。しかし、現政府に入り「太陽政策」が始まってから計画はうやむやになった。脱北者問題は北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)政権の一番痛い部分の一つだったからだ。政府の計画にも現実的な制約があっただろうが、中国内の脱北者が最高10万名とまで推算されている点を考えれば、簡単に諦められる事業ではないと言える。
チャン・ギルス君の場合、昨年5月、家族の逃避資金を作るため、韓国で北朝鮮の惨状を暴露した本を出したが、出版の直後に開かれた南北首脳会談の雰囲気に押されて関心を得られなかった。ギルス君一家は、生存に向けたもがきの末に最後の試みとして北京で篭城をすることにしたのだ。
中国政府は、ギルス君が北朝鮮の惨状を暴露した本の出版及び絵の展示などのため、北朝鮮に送還されたら処罰対象になるのを分かっていながらも、難民の地位を認めなかった。他の一行も北朝鮮政権が家族連帯処罰を慣行にしているという点を勘案すれば「難民の地位」を与えられる余地が大きかったはずだ。政府は、外交問題を考慮し中国のこのような態度に最後まで問題を提起しなかった。
最近、中国内の脱北者が増え、中国当局は脱北者が国境を越えてベトナムやモンゴルなどに行くのを防ぐため、国境警備を強化させている。中国内の脱北者は、北朝鮮への強制送還の恐怖の中で崖っプチに立たされている。第2、第3の「ギルス」家族が出てくる可能性は高い。
「太陽政策」は、金正日(キム・ジョンイル)総書記だけでなく金正日体制の影までも明るく照らす太陽になるべきではないだろうか。
權基太 kkt@donga.com






