
年頭から朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)には変化の兆しが現れている。その中でも、4日付け労働新聞に載っている「21世紀は大々的な変化の世紀、創造の世紀である」という題のキム・ジョンイル(金正日)総書記の発言は、新たな時代に新たなる観点で国家経営に臨むと言うキム総書記の新思考によるメッセージと言えるだろう。さらにキム総書記の訪中と絡んで、その新思考に対する興味と比重が一層高まっている。
キム総書記が現時点で新思考を提案した背景には、いくつかの複雑な要因があるとみられる。
まずは、北朝鮮が直面している経済的遅れと非効率的な体制によって、既存の経済運営の方式ではこれからの時代に対応できないという評価を下したはずだ。食糧難は、韓国を始めとする諸外国の支援で乗り超えられるが、経済発展は外部の支援だけでは達成できない。住民に対する経済的動機の誘発なしに、そして急速な科学技術時代への適応無しには、経済強国建設は実現できない。こうして“社会主義建設の歴史的な教訓”から心得た真理である思想教養事業を強化する一方、現実に適応するためにも、新思考という新たな命題を提示したのだ。
第二に、これまで20年間にかけて改革と開放を進めてきた中国の社会主義的発展モデルに対する期待感が大きくなったのだろう。中国式のモデルとは、既存の共産党中心の政治体制は維持しながら、市場経済のシステムを導入し経済発展を図るとともに、統一問題については1国2体制を適用しているものである。これに対して北朝鮮は最終的に肯定的な評価を下したのである。過去の社会主義圏の改革の過程で既存の政治体制が崩壊したのは違って、中国の政治体制は健在しており、「帝国主義者の陰謀」と「内部の裏切り者の策動」にも関わらず、これからも続くだろうと言う見通しがあったのだ。また、中国が韓国との関係改善にも関わらず、北朝鮮を支持している事に対しても確信し、新思考を提唱したのだ。
第三は、新たに発足するブッシュ大統領の体制下での朝鮮半島政策に向けて、新たな戦略と方策を立てなければならなかったのだろう。これまでクリントン政府の8年間は、核とミサイル問題を適切に活用し成果をあげた反面、ブッシュ政府においてはこれまでの方法では逆効果を招きかねないからだ。キム総書記の新思考は、基本的には経済発展方式の転換に焦点を合わせているが、対米関係の改善が北朝鮮の経済の建て直しに直接関係があると言う点で、新たな対米関係の構築は、これからもっとも重要な課題なのかもしれない。このような対米関係の改善に対するメッセージをキム総書記は、新思考の提案を通じて間接的に伝え、内部の雰囲気を作り上げている。
第4に、昨年の南北首脳会談以降、南北関係の進展について北朝鮮の観点から検討してみると、名分と実利などすべての分野において、期待以上の成果をあげたと評価したのだろう。新年から本格的に進められるケソン工業団地の建設とキョンイ線(京義線・ソウル・シンウィジュ間)の開通など、新しい南北経済協力時代をより積極的に活用するために、新思考に基づいて住民の思想と運用システムを前もって整備する考えなのだ。しかも、今年に予定されているキム総書記のソウル訪問を控え、北朝鮮のエリート達を‘キム総書記’の指導のもとに結束させるには、新思考は非常に有用な指針になり得る。
このようなキム総書記の新思考に対して、韓国政府は希望の交えた期待よりも、徹底的な対策をたてるべきだ。何よりも、キム総書記の新思考が、北朝鮮が直面している諸問題を診断する際には現実的なものであるかも知れないが、その解決案が住民の暮らしのレベルを高め、体制の安全を図るという中国式のモデルをありのまま受け入れるかどうかはまだわからない。新思考を提唱しながらも、一方では‘指導者決死擁護’、‘先軍政治’などのようなこれまでの政治思想的土台を強化し、南北問題の自主的な解決と‘連邦制’統一を強調している最近の北朝鮮の態度も注視しなければならない。特に、新思考を通じて中国とより密接な関係を維持している北朝鮮が新たな米中関係に伴って、東北アジアではどんな変化をもたらすのか、さらに朝鮮半島に対する影響力が急増している中国の役割に対しても、多角的な対応策を立てなければならない。






