《最近、急激に組織化、長期化している集団デモは、利害集団間の争いのレベルを超え、韓国社会の健やかな価値観が崩れつつある事を示しすものであるとし、懸念する声が高まっている。数万人の農民が、21日全国の100個所で同時に集会を開き、高速道路まで占拠し、「農家負債の償還猶予」を主張する一方、韓国労働組合総連盟と民主労働組合総連合が「冬季闘争」の共助に合意するなど、現政府が発足して以来、前例のない状況が続いている。》
この冬季闘争は、韓国電力の労組が発電部門の売却方針に反発し、「24日ストライキ」を宣言し、建設労連は29日、金属労連は30日、事務金融労連は12月4日など、ストライキの日程が具体化しており、これは12月8日の総ストライキを通じて一体化される見込みだ。その他にも医薬分業紛争のような団体行動もある。
このような行動は物理力に頼った‘集団利己主義’や‘競り合い’という側面があり、その方法が共感を得るのは難しいが、‘構造調整原則の不在’や‘政府が招いた信頼喪失’がこれを扇いでいると言う指摘もある。
国民一般の不信の中でもっとも大きいのは、「この社会は、原則がなくなった」ことである。また、与党と政府があまりにも得票を意識し、大衆に迎合する人気主義にとらわれ、原則の崩壊を招き、事態を放置してきたということだ。
ストックトゥファンズのパック・クァンテック専務は、「現政権創出の基盤となった労働者や農民の集団行動の裏には、『生存権守護』の切迫した声と共に『指導層は原則を守ってないのに、私たちだけに苦痛を強いている』という抗弁が隠されている」と指摘した。
その抗弁とは、会計帳簿を偽造し、数十兆ウォンの秘密資金を造り、公金を思うがままに使ったキム・ウジュン(金宇中)会長は健在なのに、どうして大統領まで乱脈の最終責任をデウ(大宇)自動車の労働者に強いるのか、と言うことだ。また、いくらヒュンダイグループが大事だとはいっても、資金支援や出資転換など、再建の方式が他の企業の場合とは違うということだ。
また、政府が導入するとしていた「労働者株式貯蓄制度」も、過去の資本市場の先進化のレベルで廃止された制度の復活で、新たな議論の種になり兼ねない。
このように政府の一貫性のない政策をみて、インハ大学のホン・ドゥックピョ(洪得杓、政治学)教授は、「金融当局と企業の癒着が明らかになった中で、110兆ウォンの公的資金を投入し、さらに40兆ウォンが必要だから、労働者には失業を、農民には負債の受け入れを説得できるはずがない」と話した。
ヨンセ(延世)大学のイ・ジョンスゥ(李鐘秀、行政学)教授は、「ハンビッ銀行の不正貸出やチョン・ヒョンジュン(鄭鍱峻)ゲートから現われた政府の偏った態度も、国民の心が離れる事になった原因」だと断言した。
これらの指摘がみな、集団行動に免罪符を与えはしない。公企業の構造調整の抵抗などのような典型的な集団利己主義は、「創造的破壊に対するネック」だという点から、当然捨てるべき対象だという。かえって、現在の集団抵抗の動きの底に、「声なき多数」の相対的な喪失間と彼らの憤りを見守るべきだと言う声が高い。
ある労働専門家は、「二つの労働総連合を合わせても組織率は全体の12%に過ぎない。その両連合が現在の労働界の流れを説得できないまま、ひたすらついてくるだろう、と思い込むのは大きな間違いだ。さらに、自営業者や日用労働者など‘1000万非組織集団’の動きも尋常ではない」と話した。公的資金40兆ウォンの追加補正を見定め、租税抵抗を起こす気流さえもあるということだ。
今の危機を乗り超え、今後数年間続く産業再編期を克服するためには、何よりも政府が、「合理的原則は必ず守る」という信頼感を与える必要があるとの指摘が大勢を占めつつある。
そうでなければ、声を潜めていた利益集団までも、一気に自分の主張を出し始めるかもしれないからだ。そうなれば、社会崩壊という最悪の事態を招き兼ねない。
ヨンセ大学のユ・ソックチュン(柳錫春、社会学)教授は、「各種の葛藤を調整する過程で政府が見せた姿は、いわゆる‘大衆迎合主義’だった。原則を立てたら最後まで守り通すという姿勢が、信頼回復の出発点」だと語った。
政府が利害関係を調整する過程で、「公正な仲裁者」の役割を充実に果たすべきだと言う意見もある。タングック大学のカン・ミョンホン(姜明憲、経済学)教授は、「改革が避けられない運命であれば、その苦痛を皆が公平に分かち合えるように政府が最善を尽くす姿勢が必要だ」と話した。それが「正義」の出発点であるためだと語る。