平日午前9時半になれば、ソウル永登浦区汝矣島洞(ヨンドゥンポグ・ヨイドドン)のLGツインタワーの地下駐車場は、活気を帯び始める。LG電子の役員の運転手25人による英会話の勉強会が始まるためだ。会話の教材を開き、「LG電子にようこそ」、「韓国でのご滞在の間、安全にお供いたします」などの表現を英語で覚える。「ビジネス英語」ではなく「ドライバー(運転手)英語」だ。
外国人バイヤーの出迎えのため、通訳担当社員が運転手と同行するのはもはや珍しい。2年前から始まったLG電子の「英語共用化」の実施で変わった社内光景の一つだ。
LG電子は国内企業では初めて、08年を「英語共用化の元年」に決め、注目を集めた。英語共用化の必要性を強調した企業は多かったが、実際に共用化を試みたのは初めてだった。08年からは経営会議は英語で行われ、海外に送る電子メールも英語で書かなければならない。電子メールだけでなく、さまざまな書類でも英語を使わなければならない。人事や会計、生産、営業や関連電子システムも同様に、すべて英語に変わった。一部では長くは続くないという見方があった。社員たちは「非効率的」と批判する一方で、かなりのストレスも受けた。それから2年が過ぎた。
もっとも目立った変化は、自分で英語書類を作成して翻訳する社員が増えたこと。社内で通訳・翻訳を支援するイングリッシュ・コミュニケーションセンター(英語センター)の金ナミ部長は、「2〜3年前は、英語書類の翻訳の要請が多かったが、最近は通訳の要請がほとんどだ。通訳も、国内社員よりは外国人役員らが活発な対外活動のために要請するケースが多い」と説明した。
会話能力の向上も目立つ。社内で、英語共用化のモデル組織に選ばれた慶尚南道昌原市(キョンサンナムド・チャンウォンシ)の家電事業本部は昨年11月、グローバル教育フォーラムが主催したセミナーで、「本部社員の英会話試験(SEPT)の点数は06年=3.3レベルから09年=5.2レベルに上がった」と発表した。
ホン・ジョムピョHE事業本部部長は、「英語共用化以降、英語が一段と身近に感じられる」と語った。最高経営者(CEO)のメッセージやさまざまな報告書、社内報など、英語に接する機会が増えたためだ。英語共用化後、社内では英会話の勉強会など「英語インフラ」が急速に拡大した。
英語ができなければ入社はもちろん昇進も難しいくらい、人事制度が英語中心に変わった。昇進条件として、TOEICの代わりに英会話能力を重点的に評価するTOEICスピーキングが導入された。新入社員に対しても1対1の英語面接を重点的に行っている。このような変化は、単に国語と英語を共に使う共用化ではなく、英語を公式的言語として受け入れる共用化だったために可能だったという。
海外法人では、本社の英語共用化を喜んでいる。本社ではなく海外法人を中心に、品質の高い「プレミアム製品」が開発される例も増えている。かつて、海外法人は中低価格の製品生産に力をいれる方だった。プレミアム製品の開発のためには、本社と海外法人間の情報共有が欠かせないが、言語の壁があって限界があった。しかし、英語での業務協力が活発化し、現地での研究開発(R&D)能力の向上につながっているという。
海外では、LG電子への入社を希望する現地人が増えているという。韓国企業ではあるが、英語でも気楽に働ける環境だという認識があるためだ。LG電子の関係者は、「韓国企業というイメージより、グローバル企業というイメージの方が強くなり、海外法人への入社希望者が以前より2〜3倍も増えた」と話した。
海外法人と本社間の業務もスピードが向上した。以前は逐次通訳を使うことが多く、会議時間が2倍もかかったが、今はほとんどを直接英語で話している。
悲観的な見方は依然多い。ある社員は、「ハングルでは30分もあれば書き上げる書類を、英語で2時間もかけてようやく書き上げると、情けない気がする」と話した。別の社員は、「普段は別に問題ないが、会議で相手のほうを説得しなければならない時は苦しいばかりだ」と打ち明けた。このような非効率は依然、LG電子が乗り越えなければならない課題として指摘されている。
また、英語は一つの道具に過ぎないが、英語能力だけを過大評価することもあり得ると懸念する声もある。英語を実用的に活用せず、昇進条件としてだけ考え、役員や社員が過剰なストレスを感じている可能性もあるという。
しかし、最近の一番大きな変化は、英語能力とは関係なく、英語共用化を心から受け入れる雰囲気ができつつあることだ。LG電子の幹部社員は、「『いい加減にしては止めるだろう』と思っていた社員たちは、待つことを諦め、参加し始めている」と話した。
企業の英語共用化を研究している延世(ヨンセ)大学の牟鍾璘(モ・ジョンリン)国際大学院教授は、「優秀な外国人人材を誘致し、グローバル企業として成功するためには、企業の英語共用化は選択ではなく必須だ」と言い切る。世界の8万人あまりの社員のうち、外国人が5万人に上るほど、LG電子はすでにグローバル企業なのだ。
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