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[オピニオン]ジカ熱より恐ろしいウイルス

[オピニオン]ジカ熱より恐ろしいウイルス

Posted February. 22, 2016 07:15,   

Updated February. 22, 2016 07:20

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最近、アルゼンチンの海岸に子どものイルカが打ち上げられた。人々が集まってイルカに触り、写真を撮ろうと大騒ぎした。イルカは海に戻れず、その場で息絶えた。世界自然基金によると、この不憫なイルカは、アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジルだけに棲息するラプラタカワイルカで、3万頭しかいない絶滅危惧種だった。

◆先週、メキシコ訪問中のフランシスコ法王が「微笑み天使」から「怒れる法王」に変身するハプニングが起こった。モレリア市で群衆の手を一人ひとり握って挨拶する法王の袖をある市民が強く引っ張ったため、80歳の法王が車椅子に乗った少年の上に倒れそうになった。法王が分けるロザリオをもらおうと必死になって突進したのだった。普段、慈しみ深いことで有名な法王は子供がケガをしなかったか確認した後、険しい表情で2度叫んだ。「Don't be selfish(自分勝手はやめろ)!」

◆米ニューヨークタイムズの有名コラムニスト、デイヴィッド・ブルックス氏は、著書『人格形成への道』でこのように現代を診断した。「その誰も私より良いわけではない。しかし、私もまた誰よりも良いわけではない」という謙譲の文化から、「私が成し遂げたことを見よ。私は本当に特別だ」と叫ぶ自己広告の文化に変わったという評価だ。そして、ブルックス氏は、セルフ過剰に陥った「ビッグ・ミー(Big me)」よりも、内面の成熟を重視する「リトル・ミー(Little me)」の価値を注目する理由を教えてくれる。そのような意味で、人生は成功の話ではなく成長の話ということだ。

◆外部感染ではなく自己発生という点で、ジカ熱よりも恐ろしい新種のウイルスが今、世界を飛び交っている。その名前は利己心であり、強固な自己愛のウイルスだ。火星に探査船を送り、重力波を観測する時代になったが、人間の内面は特に変わっていない。子どものイルカが死んでいく姿を見ながら写真を撮り、自分の欲を優先させて体の不自由な子供を危険に陥れる『セルフ過剰』の時代。「Don't be selfish」という叫び声が胸に染みる理由だ。

高美錫(コ・ミソク)論説委員 mskoh119@donga.com



고미석기자 コ・ミソク記者 mskoh119@donga.com