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娘の結婚式でかぶった帽子に込められた抗がん剤治療中の父親の思い

娘の結婚式でかぶった帽子に込められた抗がん剤治療中の父親の思い

Posted May. 06, 2024 09:05,   

Updated May. 06, 2024 09:05

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「父キム・ソンベ、母イム・オジョの長女ジョンヒ(ニックネーム お姫様)」。1979年、父キム・ソンベさんが長女の結婚を記念して原稿用紙に書いた文だ。成人した娘を「お姫様」と呼ぶ父親の愛情が伝わってくる。キムさんは、両家の顔合わせや結婚式はもちろん、新婚旅行や結納の日のスケジュールまで丁寧に書いている。キムさんは、娘が出産した1984年、孫娘の名前を直接つけて義理の息子に手紙を送ったりもした。

国立民俗博物館は、「家庭の月」を迎え、企画展示室2でこのような父親の話を扱った企画展「父」を先月30日から紹介している。全部で3部構成のほか、インタビュー空間、収集資料空間などで多彩に構成された展示では、144人の父親の心が込められた所蔵品や資料など150点余りを見ることができる。

特に、2部「最近の父 & 虎の父」では、茶山(タサン)丁若鏞(チョン・ヤギョン、1762~1836)の子どもたちへの愛を感じることができる。全羅南道康津(チョンラナムド・カンジン)で流刑中だった丁若鏞は1810年、妻が送った茜色の裳を切って作った書帖「霞帔帖」に、子どもたちに伝えたい言葉を書いた。「体と心を磨いて勤勉に生きなさい」、「学問と処世術を身につけて後に備えなさい」などの教訓が主に書かれている。博物館のビョン・ジョンソク学芸研究士は、「朝鮮時代の父親は厳しかったようだが、子どもに対する愛情だけは最近の父親に劣らなかった」と話した。2010年に宝物に指定された霞帔帖は、保存管理のため、今月13日まで公開される。

1934年、キム・ギョチョル(1880~?)という人物が息子のジョンオクの1歳の誕生日を記念して作った「千人千字文」も見ることができる。千人の知恵が子どもに伝わり、立派な人間になることを願って、千人の知人に一文字ずつ頼んで作った千字文だ。

「100人の記憶」という名前の資料空間では、市民100人が父親の思い出を博物館に寄贈したものを見ることができる。娘のチョン・ダソムさん(33)は、父親が癌治療後、初めて、そして最後に行った旅行で父親が買ってくれた扇子を寄贈した。チョンさんは、「旅行先の蒸し暑さで苦しむ私に父が買ってくれた扇子」とし、「毎年夏になると父との旅行を振り返り、父の愛を思い出している」と話した。

息子のイ・ゴンウクさん(53)は、留学していた1995年に父親からプレゼントされた万年筆を大事にしていた。イさんは、「30年間、いつもこれでメモを取り、字を書いてきた」とし、「(万年筆で書いた文章を見ると)色あせたが、何だか古風に見える」と話した。

この他にも、靴、給料袋など、苦労して生計を立てていた父親の姿を思い起こさせる所蔵品も多数展示されている。抗がん剤治療で少なくなった髪を隠すために娘の結婚式でかぶった帽子のように、胸を打つようなものもたくさんある。

96年に100万部が販売されブームを巻き起こしたキム・ジョンヒョンの小説『お父さん』、2004年に発売された童謡「お父さん、がんばって」など、父親に関する書籍や音楽も楽しめる。また、ブースに設置された2台のダイヤル式電話で聞くことができる、父親が子どもに、子どもが父親に残した肉声も感動を与えてくれる。展示は7月15日まで。無料。


サ・ジウォン記者 4g1@donga.com