
慶尚北道(キョンサンブクド)地域を襲った過去最悪規模の山火事被害の復旧が進んでいた4月、蔚山(ウルサン)北区のあるボランティア団体を80代の女性が訪ねた。手には10万ウォンの入った封筒を握っていた。基礎生活受給者だという女性は、基礎年金と高齢者雇用手当を節約してためたお金だとし、「ニュースを見て胸が痛み、持ってきた」と語ると、最後まで名前を明かさず立ち去った。
このように名を名乗らず分かち合いを実践する「匿名寄付」が、今年大きく増えていることが分かった。28日、情報公開請求で提出された大韓赤十字社の資料によると、今年(今月10日現在)に受け付けられた匿名寄付金は367億ウォンと、前年(129億ウォン)から約2.8倍に急増した。全体の寄付金に占める匿名寄付の割合も、同期間に10.3%から19.2%へと大きく伸び、直近5年間で最高となった。匿名寄付とは、氏名や住民登録番号、事業者登録番号などを明かさずに受け付けられた寄付を指す。
高額寄付者の間でも「静かな分かち合い」は主流だ。社会福祉共同募金会(愛の実)の累計1億ウォン以上の匿名後援者は、直近5年間で586人と、全高額後援者の15%に達する。ユニセフ韓国委員会にも、同期間に31人の資産家が計14億ウォン超を匿名で寄託した。
匿名寄付が増えた背景には、相次ぐ大規模災害と、静かな形で分かち合いを実践しようとする意識の変化があるとみられる。大韓赤十字社のカン・テフン・デジタル募金チーム長は、「昨年12・29の務安(ムアン)空港での済州(チェジュ)航空旅客機事故に続き、政府樹立以来最悪とされた3月の慶北山火事、7月の『怪物的豪雨』による各地の土砂災害など、大きな災害が相次ぐ中で、相互扶助の精神がよみがえったようだ」と話した。光云(クァンウン)大学行政学科のチョン・ジンギョン教授(美しい財団寄付文化研究所副所長)は、「かつては寄付が集団的行為だったが、最近は『自分にとってどんな意味を持つのか』を問い直す個人的実践へと性格が変わっている」と説明した。
ソ・ジウォン記者 釜山=キム・ファヨン記者 wish@donga.com






