
「技術力と将来の成長エンジンを同時に確保せよ」
現代(ヒョンデ)自動車グループは18日、マンフレッド・ハラー副社長を社長に昇格させるなど、計219人を昇進させる年末人事を発表した。中国メーカーの電気自動車(EV)の急伸や、完全自動運転(FSD)を武器にしたテスラの急成長など、変化の激しい世界の自動車環境の中で、組織の安定を図りつつ、次世代車への転換を加速させる狙いがにじむ。
今回の人事で同グループは、自動車メーカーから、情報技術(IT)と人工知能(AI)を融合させた総合モビリティ企業への転換を明確にした。全体の昇進者のうち、約3割を技術・研究開発(R&D)分野で起用した。
R&D本部長には、新任のハラー社長が就いた。会社側は、ハラー氏に対し、ハードウエアとソフトウエアなど関連部門が積極的に協業する組織文化の構築を求めている。ハラー氏は、フォルクスワーゲングループ傘下のソフトウエア開発会社やポルシェ、アップルなどでモビリティのハードとソフトの両分野を率いてきた「融合型」のスペシャリストだ。
ハードウエア製造の競争力強化を担う鄭俊喆(チョン・ジュンチョル)製造部門長副社長も社長に昇格し、製品競争力強化の方針に弾みをつけた。ソフトウエア定義車両(SDV)を「将来の中核事業」と位置づける現代自動車は、この分野で競合との差を広げる構えだ。
不確実性が高まる北米では、起亜(キア)の尹勝奎(ユン・スンギュ)北米圏域本部長副社長を社長に昇格させた。トランプ米政権による高関税など先行きが不透明な状況下でも、好業績を上げた点が評価されたという。
グループ内の相乗効果を高める配置転換も柱だ。現代製鉄の徐康賢(ソ・ガンヒョン)代表取締役は、グループ企画調整担当社長に異動し、後任には李輔龍(イ・ボリョン)新社長が内定した。研究開発と生産を幅広く経験した李氏が製鉄事業の競争力強化を担い、グループ各社を経験した「財務通」の徐氏は、張在勲(チャン・ジェフン)副会長からグループ全体の調整役を引き継ぐ。
このほか、チョ・チャンヒョン現代カード代表と田始雨(チョン・シウ)現代コマーシャル代表を、それぞれ専務から副社長に昇格させた。外部から迎えたシン・ヨンソク副社長は、第2代HMG経営研究院長に就任する。同研究院はグループのシンクタンクだ。常務昇進者の49%を40代から登用するなど世代交代も進めた。
一方、最近辞任したソン・チャンヒョン前AVP(未来プラットフォーム)本部長社長の後任は、今回の人事では決まらなかった。テスラが完全自動運転の水準を大きく引き上げ、中国勢も急速に追い上げる中、現代自動車グループ独自の自動運転競争力の在り方を巡る熟考が続いているとみられる。自動車業界の関係者は「これまで進めてきた自動運転など未来プラットフォームの方向性が、自動車メーカーとしての強みと十分に融合していない点を検討してきた」とし、「テスラとの差別化とグループの強みを生かす道筋を見いだすには、なお時間がかかる可能性がある」と話す。
グループ側は「ソン前社長体制で策定したSDVの中核技術の量産展開に向け、次世代開発プロジェクトを予定通り進める」とし、「今回の役員人事を体質改善と再跳躍の契機とし、SDV分野で圧倒的な競争力を確保するため、投資を継続する」と説明した。

李沅柱 takeoff@donga.com






