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五里霧中の関税交渉、「予言書」を読み返す

五里霧中の関税交渉、「予言書」を読み返す

Posted October. 09, 2025 09:36,   

Updated October. 09, 2025 09:36


7月末に大枠で妥結した韓米関税交渉が、その後の調整過程で五里霧中に陥ったことで、安堵感は今や途方に暮れる気持ちに変わった。融資・融資保証の形で考えていた対米投資3500億ドルについて、米国側が「現金前払い」という無理難題を吹っかけているためだ。MASGA(Make American Shipbuilding Great Again)プロジェクトなどを通じて、韓国は相互ウィンウィンを夢見たが、米国側はこれを「米国だけ偉大に」と考えているようだ。

八方塞がりの気持ちを晴らすために、今こそ「予言書」を開く時だ。昨年11月に書かれた「世界貿易システムの再構築の手順」と題する論文で、「ミラン論文」とも呼ばれる。米連邦準備制度理事会(FRB)の中で一人だけ「ビッグ・カット」を主張し、トランプ米大統領を援護射撃するFRBのスティーブン・ミラン理事が書いた。論文が出た際は私たちが名前さえ正しく発音できなかったほど無名だった著者の提案どおり交渉が進んでいる。

論文は「経済不均衡の根源は持続的なドルの過大評価にある」と指摘する。米国の製造業の競争力を強化して財政・貿易赤字を減らすにはドル安を誘導する必要がある。通貨調整を誘導する梃子(てこ)は高率の関税だ。「懲罰的関税」を課した後、関税緩和を条件に他の国々を交渉のテーブルに引き出す。米国の安全保障の傘を取り払うという脅しも併用する。

問題はドル安で基軸通貨の地位が揺らぎ、国債金利が急騰する可能性があるという点だ。論文は各国が保有する米国債を100年満期の超長期国債に転換すれば、利子負担なしに資金を思う存分使えると提案した。流動性不足を懸念する国には通貨スワップを「あめ」として与えることができる。運動もせず、好きなだけ食べながら体重を減らすという魔法のダイエット薬のような処方だ。

4月初め、米国が全世界に相互関税を宣言した後の進行過程は、論文の主張と似ている。高率の関税を投げつけ、米国を満足させる提案を持ってくれば引き下げる、というやり方だ。総選挙を目前に控え政治的に急いでいた日本が先に手を挙げ、韓国も日本の合意を基準点として交渉を急いだ。大したことではないと思っていた3500億ドルの対米投資は、知ってみるととんでもない足かせだった。全額現金で受け取り、米国が望むところに投資し、収益の90%を米国が得るというのは、他人の金を思うままに使うという100年満期国債アイデアの別バージョンだ。

一部では敗戦国に課された戦争賠償金より過酷だとし、交渉を覆そうという主張まで出ている。相互関税25%を適用されても韓国全体の輸出は4%ほど減るにとどまり、米国に払う金でむしろ被害企業に支援する方が良いということだ。しかし関税を税収確保を超え「脅迫の手段」とみなす米国がさらに高い「懲罰的関税」を課す可能性もある。さらに輸出で生きる韓国が米国市場を完全に諦める賭けをすることはできない。

今としては盤を壊さずに慎重に交渉を続けていくしかない。最低限の防御装置である通貨スワップを含め、投資規模と条件の見直しに努力しなければならない。日本の動きも再び確認する必要がある。次期日本首相となる自民党の高市早苗総裁が再交渉の可能性を示唆し、赤沢亮正経済再生相は「5500億ドルのうち実際の出資は1~2%に過ぎず、残りは融資と融資保証だ」と主張している。今回は7月交渉の時のようにデッドラインに追われて細部を見落とすことがあってはならない。政界も政府と交渉チームに対する政治的攻勢と圧迫を控え、静かに待つ余裕が必要だ。