Go to contents

『新・未来をひらく歴史』日中韓が同じ歴史教材で

『新・未来をひらく歴史』日中韓が同じ歴史教材で

Posted August. 16, 2025 08:43,   

Updated August. 16, 2025 08:43


死ぬまで自国の侵略戦争を激しく批判した日本の詩人、鶴彬(つる・あきら、1909~38)。韓国ではあまり知られていない人物だが、1937年に日本が中国に対して全面戦争を開始すると、これを批判し、反戦を訴える詩を相次いで発表した。治安維持法違反で逮捕され、翌年この世を去った。

それより前の32年、尹奉吉(ユン・ボンギル)義士が虹口公園で義挙を決行すると、中国国民政府は金九(キム・グ)ら臨時政府の指導者たちを秘密裏に保護し、日常生活を支援しながら抗日運動を助け合った。

『新・未来をひらく歴史』は3ヵ国の歴史学者と教師、市民団体が「東アジア共通の歴史認識」を共有するために共同で作った3冊目の歴史教材だ。東アジアが西洋の圧力で門戸を開いた19世紀の開港期から今日に至る歴史を網羅している。著者39人と翻訳者24人が2015年から10年間力を合わせて執筆した。ソウル大学、東京大学、中国社会科学院、アジア平和と歴史教育連帯などに所属する著者が参加した。

退屈になりがちな歴史書だが、読みやすく興味深く読める。第3部第9章、36の質問で構成されており、各章の冒頭には豊富な背景説明と年表が添えられていて理解しやすい。高校の副教材を想定して書かれているが、普段考えもしなかった質問は成人読者の意表を突く。例えば「外交交渉はどの言語で行われたのでしょうか」「総力戦体制で障害者はどのような存在だったのでしょうか」などだ。

例えば、1882年に朝鮮が西洋列強と結んだ最初の条約である「朝米修好通商条約」締結の現場ではどの言語が使われたのか。正解は英語でも朝鮮語でもなく中国語だった。当時の朝鮮には英語を話せる通訳官がいなかったため、直接交渉ではなく清の仲介で交渉が行われたからだ。同書は「全権代表の申櫶(シン・ホン)の言葉を朝鮮の通訳官が中国語に訳し、中国人通訳官がさらに英語に通訳して米国の全権大使に伝える方式で会談が進められた」と説明している。

同じ事件に対する日中韓各国の状況と立場をバランスよく整理している点も注目される。韓国では8月15日は暗黒のような日本の植民地支配から脱した「光復節」だ。北朝鮮では「祖国解放記念日」と呼ばれる。一方、敗戦国の日本では「終戦記念日」と呼ばれる。「敗戦」や「降伏」といった「刺激的な」表現は使わないという。では台湾の「光復節」も8月15日なのか。日本の台湾総督府が中国国民政府と降伏文書に調印した10月25日を光復節に指定している。

本を閉じると、対立と協力が交互に続く東アジア3ヵ国に対する視野が広がったことを感じる。「誰かを敵対するのは相手をよく知らないからだ。対話と討論、未来に向けた連帯こそが新しい歴史の可能性を開いてくれる」という著者たちの言葉に思わずうなずいてしまう。副題は「東アジア3国の近現代史」。


イ・ジユン記者 leemail@donga.com