
韓国軍は4日、最前線に設置した北朝鮮向けの宣伝用拡声器の全面撤去作業に着手した。李在明(イ・ジェミョン)大統領が就任1週間後の6月11日に拡声器放送の停止を指示したのに続き、54日ぶりに拡声器の撤去まで「迅速かつ徹底的」に進められた形だ。2018年の9・19南北軍事合意の復元を大統領選の公約に掲げた李在明政権の先制的な対北融和ジェスチャーが本格化している。
韓国国防部関係者は4日、「今日から対北拡声器の撤去を開始した」とし、「態勢に影響のない範囲で南北間の緊張緩和に役立つ実質的な措置を施行したもの」と述べた。そして「撤去対象は固定式と移動式拡声器全体であり、数日以内、今週中に撤去が完了する予定だ」と説明した。韓国軍消息筋は「国連軍司令部と拡声器撤去問題について事前に十分に共有した」と伝えた。
韓国軍は「北朝鮮とは事前協議はなかった」と明らかにし、北朝鮮も対南拡声器の撤去などで呼応するかどうか注視している。6月11日午後に韓国が拡声器放送を停止した際、北朝鮮は翌日午前0時をもって韓国への騒音放送を停止している。
北朝鮮向けの宣伝用拡声器が撤去されるのは1年2ヵ月ぶりだ。昨年6月に尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権(当時)は、北朝鮮の「ごみ風船」による連続テロなど高強度の韓国への挑発に対抗して、文在寅(ムン・ジェイン)政権が停止した拡声器放送を6年ぶりに再開することを決定した。その後、韓国軍は固定式と移動式の拡声器合わせて約40台を東部と西部の戦線に配置し、ほぼ毎日、韓国の発展状況と金氏一家の3代世襲および北朝鮮の人権実態への批判、K-POPなどを通じた心理戦放送(自由の声)を送出した。
鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官は4日、ソウル鍾路区(チョンロク)の曹渓寺(チョゲサ)で大韓仏教曹渓宗の総務院長であるジンウ僧侶を尋ねた後、記者団に対し、「(南北間の)信頼を再び築き上げるための措置の一つ」と評価した。鄭氏は「(李在明)大統領の指示があり、拡声器が停止された。その延長線上で撤去措置は良いことだと考える」と述べた。そして「今の南北間の核心は信頼」とし、「(今は)完全に信頼が失われている」と述べた。
一部では、北朝鮮が南北関係改善への意思を見せない状況で、李在明政権が過度に北朝鮮に低姿勢を取っているのではないかという批判も出ている。野党「国民の力」所属の国防委員らは声明を出し、「いったいどこまで北朝鮮の機嫌を取るつもりなのか」とし、「一方的な自発的武装解除は国家の安全を脅かす自傷行為になりかねない」と批判した。
ユン・サンホ軍事専門記者 ソン・ヒョジュ記者 ysh1005@donga.com






