Go to contents

「愛国市民」の皆さん、愛国していますか

「愛国市民」の皆さん、愛国していますか

Posted January. 21, 2025 08:52,   

Updated January. 21, 2025 08:52

한국어

尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の拘束令状発行に反発するデモ隊がソウル西部地方裁判所に乱入した暴力事件は、米国で4年前の1月6日に起きた連邦議会議事堂襲撃事件と似ている。保守派大統領が不正選挙を主張する中、怒った支持者らが民主主義の象徴である機関に押しかけ、窓を割ってドアを壊し、内部を荒らした。陰謀論を主張する「プラウドボーイズ」などの団体が先頭に立って警察と激しく衝突した。

当時、現場を取材していた記者にとって忘れられないもう一つの光景は、暴力行為が終わった、事態は収束したと思われていた時だった。軍服姿の数百人の兵士が議会のあちこちに座っていた。銃を構えて完全武装をして、議事堂(Rotunda Hall)を一列に横切る兵士もいた。事件から数日後、静かになった議会内に足を踏み入れた時までも想像できなかった、議会と軍隊の恐ろしい不調和が目の前に広がっていた。

彼らは準戦時状況になったワシントンに投入された州防衛軍だった。バイデン氏の大統領就任式で再び暴力事件が起きる可能性に備え、当時2万人以上の州防衛軍が配備されたが、彼らの一部が宿泊施設ではなく議会内に留まっていたのだ。「万一の追加暴力に備えるために、これだけの兵力を投入する必要があるのか」と思ったが、当時の雰囲気はそれほど深刻だった。彼らが完全に撤退するまでにに2ヵ月もかかった。

議会や司法機関を標的とした政治的暴力はそれ自体深刻だが、より大きな問題はそれが繰り返され拡散する可能性が高いということだ。自由民主主義の枠組みの中で、互いが守ってきた法治の線を越えることで、内部あるいは反対陣営を刺激することになる。ただでさえ深刻化している政治的二極化を極限まで追い込むのだ。一度経験した暴動は不安を増大させ、こうして高まった不信感はさらに多くの公権力投入につながる。国家的浪費だ。

尹大統領の釈放を求めて西部地裁前に集まっていたのは、尹大統領が「愛国市民」と呼ぶ支持者たちだ。「国内外の主権侵奪勢力と反国家勢力のしゅん動で危機に瀕している大韓民国」を守ってほしいという尹大統領の手紙は彼らに贈られたメッセージだ。方法や方向は違うが、心から国家の富と安全を危惧する人々もいたはずだ。20代の学生から80代の企業家まで、保守の価値に共感し、これを土台に大韓民国を守るという一念で立ち上がった人々も多かっただろう。

しかし、今回の暴力事件で愛国市民は、いつの間にか極右ユーチューブの陰謀論に振り回された、ただの暴走勢力と片付けられるようになった。韓国の国際的イメージを汚し、国家の威信を傷つけたと批判されてもしかたない。戒厳令だけでも困惑するのに、暴力沙汰まで起こすとは、国際社会に民主主義首脳会議を主催した国と名乗ることも恥ずかしい。主要8カ国(G8)やG10のような、先進国グループへの仲間入りも当分の間は諦めるしかない。「安定した自由民主主義を維持しているという国家的信頼が基本条件だが、その前提からあまりにも遠ざかってしまった」というため息が出ている。

一度エスカレートした暴力扇動は、いつ、どのように再発するか分からない。憲法裁判所前では、すでに3人が壁を乗り越えようとしたり、警察と衝突したりして逮捕された。尹大統領の拘束令状を出した判事は、身辺保護を要請せざるを得なかった。緊迫した現場で、またどんな偶発的な状況が起こるかハラハラする。揺らぐ法治の隙間を埋めるために消耗される国家的エネルギーも相当なものだろう。このようなことを起こして、それに賛同することが、本当に愛国市民の愛国行為なのかと問いたい。