Go to contents

[オピニオン]孫興民が国内で献血できない理由

[オピニオン]孫興民が国内で献血できない理由

Posted December. 11, 2023 08:46,   

Updated December. 11, 2023 08:46

한국어

数日前、ソウル松坡区(ソンパグ)の可楽(カラク)市場の刺身センターを訪問して少なからず驚いた。平日の午後8時過ぎの時刻だったが、空席がないほど賑わっていた。3、4ヵ月前までは、日本の福島汚染水の放流に対する懸念と恐怖が広がっていたことを勘案すれば、驚くべきどんでん返しに違いない。

すべての人々の不安が消えたわけではないが、汚染水のために水産物自体を拒否する国民はかなり減ったようだ。米国、英国、豪州の研究チームが「汚染水が人体に悪影響を及ぼす可能性がほとんどない」という研究結果をサイエンスなど権威ある国際学術誌に相次いで掲載し、真実への信頼が蓄積された結果だろう。「危険度が国際基準値以下」という国際原子力機関(IAEA)の発表に疑問を提起した野党の主張も力を失っている。水産市場の活気に満ちた姿を目にしながら、韓国社会が汚染水トラウマから少しずつ抜け出しているという気がした。

しかし、まだ怪談が力を発揮している分野も少なくない。「人間狂牛病」と呼ばれる「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病」(vCJD)に対する過度な懸念から生じた血液管理規制が代表的だ。

政府の規定上、3ヵ月以上(1997年以降)または1ヵ月以上(1980~1996年)英国に滞在した場合、国内での献血を禁止した。フランスなど欧州諸国に5年以上滞在した人も同じだ。英国人の留学生や長期旅行客の多くは一生国内で献血できないわけだ。 イングランド・プレミアリーグでプレーしている孫興民(ソン・フンミン)や黄喜燦(ファン・ヒチャン)だけでなく、過去にプレーした朴智星(パク・チソン)や奇誠庸(キ・ソンヨン)も一緒だ。

過度な規制の被害はもっぱら病人が被っている。血液不足による必須医療現場の困難は慢性化している様子だ。特に血液規制で血液製剤である免疫グロブリン製剤が品薄現象を起こしている。このため、川崎病や移植後の免疫不全など小児や重症患者のための必須医薬品在庫が底をつく危機に瀕してる。重症患者が多いソウル大学病院は治療中断まで考える時が多いという。

国内外の専門家たちの見解を総合してみると、献血による狂牛病感染の危険は事実上消えたと見るのが合理的だ。豪州と英国の研究チームによると、英国居住者の血液輸血を受けた場合、ⅴCJDにかかる可能性は14億5000万分の1だという。米国、豪州、香港などは血液不足事態を解決するため、このような科学的根拠をもとに昨年から関連規定を削除したり緩和している。しかし、韓国血液管理当局は狂牛病騒ぎの再燃を懸念し、規制緩和に積極的に乗り出せずにいる。

新型コロナウイルスの感染拡大当時、各種怪談が出回るのを経験した国民の多くは、今や自ら真実を探して判断しようとしている。来年4月の総選挙まで「福島汚染水問題」を引っ張っていこうとした野党の態度が変わったのもこのためだろう。15年前の狂牛病騒ぎに対する痛い記憶のため、必須医療現場の崩壊を放置することはできない。献血規定についても「ウジが怖くて味噌を漬けられない」態度ではなく、より科学的根拠に基づいて国民を説得する勇気を必要とする時だ。