先月13日、米紙タイムは、ミゲル・カルドナ米教育長官(48)のインタビューを掲載した。同誌は、就任3年目のカルドナ長官が「未曾有の挑戦」に直面していると書いた。裁判処の教育関連判決から学校で起きているイデオロギーをめぐる対立、学力低下の問題、教師処遇改善の要求まで。韓国と事案は違うが、米国の教育も苦しんでいた。カルドナ長官は、「今は国が教師を最も必要とする時だ」と話した。
小学1年生の担任教師の自殺で、韓国の教育現場が暗たんたる状況下にある中、あえて米国の長官の話を持ち出す理由は、彼の履歴のためだ。カルドな長官は、人口6万人余りのコネチカット州メリデンの小学校で4年生を教える平凡な教師だった。約20年間、学校で多くの経験を積んだカルドな氏は、地元の最年少校長まで務め、州政府教育委員を経て2021年にバイデン政権の教育長官に任命された。
現場での経験を武器に、学校と教師たちを指揮するカルドナ長官を見ながら、最近周辺の教師たちから聞いた訴えが思い浮かんだ。教師死亡事件に政府が対策を打ち出す度に、教師たちは記者に「政府は、教育当局が学校現場について知らな過ぎる」と話した。
先月の事件発生以来、一連の状況を振り返ってみよう。故人が勤めていた小学校の校長は、「校内暴力の通報事案はなかった」と疑惑を否定する立場を急いで出した。「通報事案」ではなかったとは言え、校内暴力はあった。「取り返しがつかないなら、起きていないことにしろ」というネットフリックスのドラマ「D.P.2」のセリフは学校でも有効なのか。
政府は、問題の元凶として児童生徒人権条例を挙げた。ある教師は、「条例が負担になるのは事実だが、教権が崩壊した原因の一つに過ぎない」と話した。学校を建て直し、社会的議論を主導しなければならない国家教育委員会は、「哀悼」だけを残して消えた。曺喜昖(チョ・ヒヨン)ソウル市教育監は教権保護対策を発表し、人工知能(AI)「教育庁チャットGPT」のプログラムを作り、保護者の相談に使えるというアイデアを出した。「教授出身官僚」の限界だった。
ソウル市教育庁は、学校に保護者の苦情受付室を設置し、訴訟費の支援も拡大するという。ある教師は、「結局、苦情受付室と法廷で、最終的な責任は教師自身が負えという意味だ」と冷笑した。教師出身の長官や教育監だったら、少しは違っていたのでは、という不満の声もあがっている。
問題はこれからだ。修羅場になった学校を目撃した20代や30代の若い教師たちが、教職を離れている。彼らは、終身雇用や年金には未練もない。20年目の高校教師は、「数年前から、20代の教師は一人もいなくなった。学習塾や企業、7級公務員試験の準備に走る場合が多い」と話した。教師を夢見ていた小中高校生や教職を準備している予備教師たちも、今の状況を冷ややかに見守っている。
それでも彼らに伝えたいメッセージがある。カルドナ長官がタイムとのインタビューで言った言葉だ。「最近、教師たちはとても疲れて辞めることも考えていることを知っている。彼らのバーンアウト(burn out=燃え尽き症候群)は、現実(real)だ。それにもかかわらず、教師になろうとする若者たちに言いたい。あなたのために一生懸命闘い、あなたを支えてくれる、そのような政府を、まさに今あなたは持っている」。
他国の長官の口を借りて、韓国教師たちを慰めなければならない現実が悲しい。
アクセスランキング