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「SNSで梨泰院惨事の映像を見た後、眠れない」 全国民トラウマが懸念

「SNSで梨泰院惨事の映像を見た後、眠れない」 全国民トラウマが懸念

Posted November. 01, 2022 08:52,   

Updated November. 01, 2022 08:52

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「怪我はないけど、精神的なショックが大きすぎて、学校に行って、ちゃんと生活できるかわかりません」

先月29日の梨泰院惨事の現場にいた高校1年生のA君が、東亜(トンア)日報の電話取材でこう答えた。事故現場を直接経験した人だけではない。ニュースやSNSで事故を間接的に経験した人々も、「映像が忘れられない」「事故の写真を見た後、眠れない」と苦痛を訴える人が少なくない。梨泰院惨事で全国民が「トラウマ」(心的外傷)を受けた可能性があると専門家らは懸念する。

● 前例のない「全国民トラウマ」

国家トラウマセンター長のシム・ミンヨン氏は31日、東亜日報のインタビューで、「梨泰院惨事とこれまでの災害との最大の相違点は『目撃による衝撃』が非常に大きいということ」と話した。惨事の現場にいた市民は、300人を超える大規模な死傷者が発生した事態を目撃して大きな衝撃を受けた。

現場にいなかった市民らも、モザイクもなくSNSなどを通じて急速に拡散した写真や映像を見て、惨状を目の当たりにした。会社員のパクさん(42)は、「まるで自分自身や家族、知人が圧死事故に遭ったような、他人事ではなく自分のことのような気分になった」と話した。

惨事があった場所がソウルの中心部にあるということも衝撃を与える要因に挙げられる。延世(ヨンセ)大学社会福祉学科のソン・インハン教授は、「梨泰院惨事が発生した場所は特別な場所ではなく、誰もが訪れる馴染みのある空間」とし、「同じような惨事が自分自身にも起こる可能性があるという不安感が増幅されている」と話した。

● 日常生活が難しい時は診療が必要

医療界によると、災害を経験した後に現れるトラウマには、恐怖、不安、悲しみ、激しい空腹や食欲の喪失、頭痛、胃腸障害などがある。このような反応は、衝撃的で恐ろしい出来事を経験した後に誰にでも現れ得る症状だ。

トラウマを放置すると後遺症が大きいため、迅速な対処が重要だ。シム氏は、「災害を経験した直後に十分な安定を取り戻すことができず、周囲や社会から支援を受けられなければ、予後が良くない可能性がある」とし、「トラウマ反応が生じた後、回復するかより大きな後遺症で苦しむかは『初期対応』にかかっている」と話した。

トラウマ反応が現れたら、必ず精神科専門医の診療を受けなければならない。トラウマ反応が1ヵ月以上続くと、「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」という精神科の疾患につながる可能性があるからだ。診療が必要なほどのトラウマ反応としては、△食事、風呂、着替えなど日常生活が困難な場合、△さらなる災害に遭うという強迫的な恐怖を感じる場合、△記憶喪失や時空間に対する認知能力を喪失する場合などがある。

● 生存者に「忘れろ」、「運が良かった」と言ってはいけない

惨事によって心が不安定な状態が続く場合は、心を安定させる方法を活用しなければならない。専門家たちは、快適で安定した姿勢を取り、体の緊張を和らげ、不安な考えを減らす「癒やしの技法」を推薦する。代表的な癒やしの技法は、両腕を胸の前でクロスさせ、胸から肩のあたりをやさしく叩く「バタフライハグ」、地に足をつけて大地とのつながりに集中する「グラウンディング」、呼吸で心を癒す腹式呼吸などがある。

トラウマを克服するには周囲の支援も必要だ。梨泰院惨事によって精神的苦痛を訴える知人がいる場合、言葉に注意しなければならない。国家トラウマセンターは、災害を経験した人々に言ってはいけない言葉として「忘れよう」、「もっと悪い事が起こったかもしれないのに運が良かった」、「すぐに良くなる」などを挙げた。災害による苦痛を受け入れる程度が人によって異なるため、むやみに判断してはならないためだ。


キム・ソヨン記者 ユ・チェヨン記者 ksy@donga.com · ycy@donga.com