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「悪魔」を見た

Posted March. 14, 2022 09:03,   

Updated March. 14, 2022 09:03

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「ここで、私はしばらくまだ人間だった」(バルラーム・シャラーモフの「コリマ物語」)

かつて、「正義とは何か」について討論するシーンを見たことがある。難破した船で生き残った4人の船員が、大海原に漂流し、その中で最も弱い人が捕食された事件だった。残った3人は、その肉を食べてその血を飲み、9日間持ちこたえた末に救助された。もちろん彼らは本国に送還され、殺人罪で起訴されたが。人々は「私だったらどうしていただろうか」について、熱い討論を行っていた。しかし、私たちはそんな質問を、そんなに軽く投げかけることができるだろうか。

バルラーム・シャラーモフは、モスクワ大学法学部の学生だった時代、シベリアの悪名高い収容所「コリマ」に収監された。そこで17年間を過ごしながら、寒さと飢え、1日に16時間以上の重労働に苦しめられ、「人間が見てはいけないもの、もし見ていたらむしろ死んだ方がましだ」と思うような恐ろしさを経験した。飢えに耐えられず、他の収監者の死体を食べた青年、自分が大事にしていた子犬を食べて涙を流しながらも、「それでもおいしかった」とつぶやく司祭、他の収監者が死ねば悲しむ暇もなく、彼の分け前として配給されるパンを手に入れるためにもがく人々。収容所で生き残ったシャラーモフは、自分の経験を「コリマ物語」という記録で残した。

「ここでは当分の間、私はまだ人間だった」。この文章には、人間の存在に対する深い洞察と謙虚さが盛り込まれている。シャラーモフは、自分は人間ではあるものの、「当分はまだ」と言った。極限の底で最も恐ろしい深淵に向き合った時、最後まで「人間」として残るのがどれほど難しいか、よく知っていたのだ。

「私だったら、どうだったか」。あらゆる状況の中で、私または私たちはあまりにも簡単に質問を投げかけ、正義で充満した答えを出す。そのような世の中に向かって、シャラーモフは低い声で注意深く聞く。「われわれは当分の間、まだ人間だ。でも、これからは?」