一面が暗黒だ。目を開けたのか、閉じたのか見分けがつかないほど、光一本見えない真っ暗な暗闇だ。この状況でヘッドホンをつけているのに、 誰かが急に話しかけたら? 全身の感覚が逆立ち、無限な想像力を伸ばすのにちょうどいい環境だ。
ウラン文化財団が4月12日まで上演する劇団ダークフィールドの没入型オーディオ劇「Flight(飛行)」は、舞台を機内空間のように改造した。観客が仮想出入国申告書を書き、飛行機のチケットを受け取って席に着くと、「飛行機をご利用くださった乗客の皆様ありがとうございます」という機内放送と共に飛行機は離陸する。
音で劇をリードするオーディオ劇は、韓国ではまだ馴染みのないジャンルだ。今作を制作したダークフィールドは、2016年に設立後、音響技術を活用したオーディオ劇の最先端を走る英国劇団。世界ツアーで観客11万人を集めた。暗闇の中で音、振動、きらめく閃光などを活用して共感覚的に吸収できる劇を制作してきた。視覚が遮断された時、他の感覚が鋭敏になる動物的本能を巧みに料理する。本来40フィートの船舶コンテナを改造して舞台を製作していたが、今回の公演では会場を改造して闇を完璧に演出した。改造された舞台は、ボーイング機の内部そっくりだ。
公演の境界を崩す奇抜なオーディオ劇は、「ダークフィールド」の制作者兼芸術監督であるグレン・ニ-スとデビッド・ローゼンバーグの手から生まれた。2人は23日、東亜(トンア)日報とのテレビインタビューで、「音だけで、同じ時空間でいくらでも異なる経験ができるということを見せたい。テーマパークで楽しめるような経験を『高級芸術』として感じているのが魅力だ」と語った。
約10年前から音を持って遊びながら、劇で多様な実験を楽しんでいた2人は、それぞれ現職麻酔科の医師であり、純粋美術専攻者でもある。「人間の存在、感覚、意識、無意識に対する好奇心がよく合って」ダークフィールドを設立、オーディオ劇の制作に乗り出した。2018年、エディンバラ・フェスティバルで出した作品は完売を記録した。「私たちの公演は、観客の想像力がすべてだ。完成していない叙事を想像と音で直接満たせばよい」と語った。
ドラマ開始前に、「降りるチャンスは今だけ」という寒々しい機内放送が流れる。「あら?どうしよう?」とぐずぐずしていた瞬間、あなたはもう手遅れだ。ヘッドホンをつけたまま最後まで飛行を終えるか、ヘッドホンを脱いでしばらく静けさと暗黒を楽しむ方法のみ。「同じ時空間で、聴覚によって完全に変わる二つの世界」を感じることができる劇の趣旨とも合う。観客によっては、ヘッドホン越しに聞こえる轟音に驚くことがある。2人は、「必ずしも恐怖心だけを与えようとしたわけではない」と笑った。
4月12日まで(火~木曜日は公演なし)、ソウル城東区(ソンドング)のウラン文化財団のリハーサルルーム、全席は1万8000ウォン、16歳観覧可。お問い合わせは070-4244-3591まで。
キム・ギユン記者 pep@donga.com