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新作でファウスト博士を演じる金星女さん「女優の固定観念を破る時は一番楽しい」

新作でファウスト博士を演じる金星女さん「女優の固定観念を破る時は一番楽しい」

Posted February. 10, 2021 08:22,   

Updated February. 10, 2021 08:22

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人間界のあらゆる学問を探求した老学者ファウスト。宇宙を貫く真理を得れば人間の世界も変えられるという確信したが、やがて彼は虚無主義に陥る。悪魔メフィストは、彼の彷徨う魂に密かに接近して囁く。あなたに情熱を与えるから、私に魂を売りなさいと。「契約しようか?」というメフィストの提案にファウストは答えた。「よろしい!」。神は、果たして「金星女(キム・ソンニョ)ファウスト」に救いの機会を与えるだろうか。

韓国の伝統芸能「マダンノリ」の女王、金星女(71)が26日に開幕する国立劇案の新作「ファウスト・エンディング」でファウスト博士で帰ってくる。新作舞台は約4年ぶりだ。国内では初めてファウスト役を女性が務めて注目を集めている。8日、ソウル市龍山区(ヨンサング)にある国立劇団でインタビューに応じた金氏は、「女優にとってファウストは本当に魅力的な役柄だった。芝居人生30年余りでチャンスが訪れた」とし、「『女ファウスト』ではなく『金星女ファウスト』としてみた頂きたい」と力んだ。

作品は、当初は昨年4月に開幕する予定だったが、練習室で肩をケガした上、新型コロナウィルスの感染拡大が重なってとん挫した。金氏は「昨年はやる気満々だったとすれば、今は落ち着いて作品をせんさくしている。結果的に、ファウスト博士にとっては良い状況だ」と言った。

ドラマは演出家のチョ・グァンファ氏が直接脚色した。大きなあらすじは保ったまま、ゲーテの原作を115分に絞り込んで捻った。ファウスト博士は苦悩する場面以外は優しくて愉快な人物に、メフィスト(パク・ワンギュ)は茶目っ気たっぷりの可愛い悪魔に描いた。金氏は「古典の本質を伝えることさえ守れば、大衆と向き合う方法論はいくらでも変われる」と言い、「居眠りする人は絶対いないはず」と確信した。これは、2012年から7年間、国立唱劇団の芸術監督を務め、唱(チャン)の本質と劇の大衆性を同時に手に入れた、金氏の持論ともつながっている。

男の老学者に扮した金氏の姿が少しは不思議に見えるかもしれないが、金氏は、実は男役には一家を築いている。「固定観念を破るのを楽しい」という金氏は、過去にマダンノリ「洪吉童(ホンギルドン)伝」では洪吉童役を、「ハムレット」ではホレイショ―役を演じた。腹から出す発生は、将軍の号令にもなったり、時にはなまめかしい声に一変する。一人芝居では一人え30余りの役柄を消化した変身の鬼才だ。

金氏は、「一生のロールモデルがいるとすれば、それは人ではなく、パンソリ」と言い、「一つの作品で春香(チュンヒャン)から下(ピョン)府使まで全ての役柄を消化しなければならない国楽が、私の演技と声の源」と話した。また「演出家からすれば、男メイクが意外と似合うところが影響しているようだ。私も舞台の上の自分の姿を、自分の目で確かめてみたい」と笑顔で語った。

現実世界でも、金氏はカメレオンのように変身する。演劇俳優、マダンノリ女王、芸術行政家、教授など枕詞が芝居人生ほど積もった。変身を繰り返しながらも、「完璧な演技」への願望は手放していない。しかし、今回の練習では、少し変化も起きた。「ファウスト博士をみると、まるで自分の人生のような気がした。完璧を追い求めるも、決してたどり着けない存在が人間ではないだろうか」と言った。

原作と今回の演劇との大きな違いは結末にある。原作ではファウストが神に救われたが、今回の作品では神が与えた機会を拒み、自ら責任を取るために地獄行きを選択する。金氏は、「人間性が抹殺された今の時代において、作品は自分の責任を全うよせという、人間たちへの大喝一声」だと話した。劇の最終章で、神とメフィストの前に立った「金星女ファウスト」は叫ぶ。

「地獄に行きます」。


キム・ギユン記者 pep@donga.com