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ドストエフスキーと子供たち

Posted April. 01, 2020 08:22,   

Updated April. 01, 2020 08:22

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「大人は子供から学ばなければならない」。ドストエフスキーの名作『白痴』で主人公のムイシュキン公爵が経験から言った言葉だ。

 

公爵がスイスのある村に住んでいた時だった。ある日、子供たちは外国人である公爵がマリーという女性にキスするのを見て、彼をからかい始めた。誤解だった。それは異性に対する愛ではなく、憐憫と配慮のキスだった。

マリーは肺病を患いながらも、働いて母親の世話をする、理解力は少し劣るが、優しくて純真な二十歳の女性だった。しかし、あるフランス人の商売人がマリーをそそのかして連れて行き、1週間後に道に捨てて逃げた。彼女は、服が破れて裸同様の姿で戻ると、村の人々はもとより母親や牧師まで彼女に虫を見るように対した。子供たちまで石を投げつけ、悪口を言った。大人の誤った考えが子供たちに移ったのだ。公爵がキスをしたのは、そのようなマリーが哀れだったからだ。子供たちはそれを見て驚いた。しかし公爵は、子供たちに石を投げられながらも、説得し始めた。誤解しているのだと、大人が可哀そうなマリーに根拠なく石を投げるのだと、マリーは本当に優しい人だと説明した。

公爵が、子供たちをダメにしていると騒ぐ非情な大人たちと違って、子供たちは彼の話に耳を傾け、マリーを傷つけたことを後悔し始めた。子供たちはマリーに許しを請い、貧しいマリーのために食べ物、靴、靴下、下着までこっそりと持ってきた。そして、マリーが死んだ時は号泣した。純粋ゆえに可能なことだった。純粋ゆえ大人たちの偏見に影響を受けたが、純粋ゆえその偏見から簡単に脱することができた。「子供から学ばなければならない」という公爵の言葉はそのような子供たちを見て体得した信念だった。これはドストエフスキーの一貫した信念でもあった。ドストエフスキーの小説に子供のように純粋な人物がしばしば登場する理由だ。

文学評論家・全北大学教授


キム・ソンギョン記者 tjdrud0306@donga.com